アロニアとは?
●基本情報
アロニアとは、バラ科の落葉低木でブルーベリーやラズベリーと同じベリーの一種です。
やや湿り気のある土を好み、耐寒性・耐暑性ともに強く丈夫で育てやすい植物です。花の構造がナナカマド[※1]に似ていることから、ロシアでは「黒い実のナナカマド」と呼ばれています。また、日本では「チョークベリー」「ブラックチョークベリー」「チョコベリー」、また、カマツカ[※2]に似ているので「セイヨウカマツカ」など様々な名称があります。
アロニアは直径5~10㎜程の小さな赤い実をつけ、その実は熟すと黒くなります。6月頃に小さな白色またはピンク色の花を咲かせ、秋に実をつけます。寒くなってくると葉は紅く色づき、冬には落葉してしまいます。
アロニアの果実は果皮が硬く、酸味や渋みが強いため、生食には向いていません。そのため古くからジャムやジュース、果実酒などに加工され食べられてきました。
アロニアに含まれる成分は、熱や凍結に強く加工しても壊れにくいという特性を持つため幅広く活用でき、日本でもケーキやアイスクリーム、ジャム、サプリメントとして販売されています。
●アロニアの歴史
アロニアは、北アメリカからヨーロッパに移り、19世紀の初期にロシアに入ったといわれています。寒さに強く、-30℃まで耐えることができる品種もあるため北アメリカやロシアを中心に栽培されていました。
1976年にロシアから北海道に種子が輸入されたことがきっかけで、日本での栽培が始まりました。農作物として栽培することにいち早く取り組んだのは、北海道の南西部に位置する豪雪地帯である大滝村(現在は伊達市に編入)でした。
現在、日本では北海道(旭川市・富良野市・千歳市・江別市・北見市)を中心に東北地方でも地域農業を活性化させる一貫としてアロニアが栽培されています。本州では、岩手県と長野県でしか栽培されていません。
●アロニアの品種
アロニアの果実には赤色・黒色・紫色の3種類があり、加工品として販売されているものはほとんどが黒色の種類のものです。
アロニアの品種は、チョキベル・チョキブル・オータムマジック・バイキング・アルブティフォリア・メラノカルパ・プルニフォリアなどがあります。
アルブティフォリアは赤く熟す品種で新しい枝と葉の裏に細かい毛が生えます。
チョキベル・チョキブル・オータムマジック・バイキング・メラノカルパは黒色の果実を、プルニフォリアは交雑で暗紫色の果実を実らせます。
●アロニアに含まれる成分と性質
アロニアに含まれる成分の特徴といえば、なんといってもアントシアニンの含有量の多さです。アロニアは紫色の色素であるアントシアニンを非常に多く含んでいるため、皮だけではなく果実まで鮮やかな紫色をしています。アロニアの果実の非常に強い渋みも、このアントシアニンによるものです。
チョークベリーという英名の由来は「喉が締め付けられる(ほど渋い味の)ベリー」であるという説があるほど、アロニアには強い渋みがあります。
また、アロニアには緑黄色野菜のみに多いと思われがちなカロテノイドも含まれています。特に多く含まれているカロテノイドは「β-クリプトキサンチン」「β-カロテン」の2種類です。
β-クリプトキサンチンは柑橘類に多く含まれている成分で、アロニアには柑橘類の約2分の1のβ-クリプトキサンチンが含まれています。β-クリプトキサンチンは、アントシアニンと同じく活性酸素[※3]を除去する抗酸化力[※4]が強いため、ガンの予防に効果があることがわかっています。
β-カロテンは、にんじんやトマトに多く含まれている成分で、アロニアにはトマトの約1.4倍のβ-カロテンが含まれており、このβ-カロテンも抗ガン効果があるとして注目されている成分です。
アロニアには、抗ガン効果のある2つの成分が豊富に含まれているため、近年その効果に対する研究が進められ、注目を集めています。
この2つの成分は抗酸化力も高く、多くの病気に対する効果があるとされており、健康を保つためには欠かせない成分です。
他にも、アロニアは食物繊維を豊富に含んでいるため、食物繊維が不足しがちな現代人に適した果実です。
[※1:ナナカマドとは、北海道・本州・四国・九州と日本各地に生育している高さ7~10m程のバラ科の落葉高木です。]
[※2:カマツカとは、北海道・本州・四国・九州の日本各地や、朝鮮・中国に分布する高さ1m程の落葉低木です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※4:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
アロニアの効果
アロニアには、目の健康を維持するポリフェノールの一種であるアントシアニンや、生活習慣病予防に効果的といわれるβ-クリプトキサンチン・β-カロテンや食物繊維が豊富に含まれており、以下のような働きが期待できます。
●視機能を改善する効果
アロニアはポリフェノールの一種「アントシアニン」を、非常に多く含んでいます。
パソコンや携帯電話を毎日使用している現代人の目には、絶えず目に活性酸素を発生させる青い光が入ってきています。また、紫外線が目に入ることによっても活性酸素が発生し目にダメージを与えます。このダメージが積み重なっていくと、慢性的な眼精疲労や白内障・緑内障・黄斑変性症などの病気の原因になってしまうのです。アロニアに多く含まれるアントシアニンは活性酸素を除去する作用に優れています。特に目の網膜における、この作用がよく知られています。
まず、ものを見るときには、目に入ってきた映像を目の網膜(カメラにおけるフイルムのようなところ)に映し出します。この網膜にはロドプシンというたんぱく質が存在し、このロドプシンが分解されることにより発生する電気信号が脳に伝わり、「目が見える」と感じます。この分解されたロドプシンは再合成され、再び分解され…を繰り返すのですが、疲れや加齢により、このロドプシンの再合成能力は低下していきます。
アントシアニンは、このロドプシンの再合成を助けるため、年齢や目の疲れからくるショボつきやかすみ、ぼやけを予防、改善するといわれています。【6】
●生活習慣病の予防・改善効果
抗酸化力の高いアントシアニンのパワーで、血液がドロドロになることを防ぎます。
アントシアニンには、ビタミンP[※5]に似た働きがあります。血液中の成分である血小板の凝固[※6]を抑制してくれるので、血液をサラサラにしてくれます。その結果、血管の保護・強化、循環機能の改善が期待できます。
また、アロニアに含まれている注目すべき栄養素「β-クリプトキサンチン」「β-カロテン」も生活習慣病予防に働きかけます。
β-クリプトキサンチンは、毎日摂取することで血液中の濃度を濃くすることができます。β-クリプトキサンチンが血液中に多くあると、高血糖が原因で起こる肝機能障害を予防したり、動脈硬化の予防にも効果があるという調査結果の報告があります。
β-カロテンは悪玉(LDL)コレステロールの増加を予防します。β-カロテンを摂ることによって動脈硬化・心筋梗塞などを防ぐことができます。その他にも、免疫力を上げ、喉や鼻の粘膜を丈夫にすることにより、風邪などの病気を予防することができます。
アントシアニン・β-クリプトキサンチン・β-カロテンの3つの栄養素の働きにより、高脂血症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病が予防・改善できるといわれており、様々な研究が行われています。
また、食物繊維も生活習慣病を予防するための重要な栄養素のひとつです。【1】【3】【5】
●老化を防ぐ効果
老化を防ぐ成分として、活性酸素を抑えてくれる働きを持つポリフェノールがよく知られています。日常生活で避けることのできない紫外線やストレス、排気ガス、喫煙などが原因で、人間の体には活性酸素が多く存在します。この活性酸素が体のさびつき、いわゆる老化や体の不調を引き起こす原因となっているのです。
アントシアニンは、活性酸素を除去する力が非常に強いため、アンチエイジングに効果的といわれています。
また、アロニアに含まれているビタミンCは、肌のハリや弾力を保つために必要なコラーゲンの生成を促進する働きがあります。
アントシアニンやビタミンCがたくさん含まれているアロニアは、アンチエイジング効果・美肌効果があるといえます。
また、β-カロテンは体内でビタミンAに変化し、目の網膜や口、鼻などの粘膜・肌・髪・爪などの健康を保ちます。その他にも、β-カロテンはシミやそばかすの予防にも効果があるといわれています。【4】【5】
●腸内環境を整える効果
アロニアは種子も果皮も一緒に食べられる果実です。そのため、アロニアの果実を食べることにより、食物繊維を豊富に摂ることができます。アロニアにはバナナの約6倍もの食物繊維が含まれています。
食物繊維を摂ることにより、摂った栄養素を吸収する臓器である小腸での糖やコレステロールの吸収を抑えることができます。
また、腸内で発生する有害物質の生成を抑えるため、腸内環境の改善にも有効です。さらに、整腸作用・便秘解消にも効果的なので、大腸ガンの予防にも効果があります。
●ダイエット効果
最近の研究で、アロニアが脂肪の分解を促進する働きがあることが発見されました。また、血液中の中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールを減少させるため、体重の増加や脂肪の蓄積を抑えるといった効果があります。
アロニアに含まれる成分であるカロテノイドには、脂肪の代謝を促進する作用があり、ダイエットに効果的であるとしてアロニア抽出エキスが配合されたサプリメントやドリンクが女性の間で人気を高めています。
[※5:ビタミンPとは、ビタミン様物質と呼ばれる、ビタミンと似た働きを行う物質の一種で、ヘスペリジン、ルチン、ケルセチンなどの総称です。]
[※6:凝固とは、出血を止めるために体が血液を凝固させる働きのことです。
アロニアは食事やサプリメントから摂取できます
こんな方におすすめ
○目の疲れが気になる方
○生活習慣病を予防したい方
○いつまでも若々しくいたい方
○便秘でお悩みの方
○風邪をひきやすい方
○スリムな体型を目指したい方
アロニアの研究情報
【1】アロニア果実抽出物を0.5, 5, 50μg/mL 投与すると、血液凝固に関係する物質トロンビンのはたらきが阻害され、血小板凝集抑制作用が確認できました。このことより、抗血栓作用や生活習慣病予防効果が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22473647
【2】ヒト大動脈内皮細胞に、アロニア抽出物を50μg/mL を投与したところ、血管中の活性酸素の産生が抑制され、炎症関連物質であるNF-κB の産生が抑制されたことから、アロニアが抗炎症作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21863241
【3】メタボリックシンドロームの中年男性38名および健常成人14名を対象に、アロニア抽出物100mg を2カ月間摂取させたところ、総コレステロール、LDLコレステロール及びトリグリセリドが減少し、血小板凝集抑制作用が見られたことから、アロニアが生活習慣病予防効果や血流改善効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21850495
【4】乳がん患者の血小板に、アロニア抽出物 50μg/mL を投与すると、乳がん患者で見られた血小板での活性酸素の増加が抑制されたことから、アロニアが抗酸化作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19444773
【5】糖尿病のマウスに、アロニアのポリフェノール成分を12週間摂取させたところ、糖尿病の指標の一つ糖化ヘモグロビンの上昇が抑制され、抗酸化酵素SODやペルオキシダーゼの減少も抑制されたことから、アロニアが糖尿病予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20201265
【6】ぶどう膜炎誘発ラットに、アロニア抽出物 100mg を投与すると、眼房水における炎症関連物質である一酸化酵素(NO)やTNF-αやプロスタグランジンE2 の増加が抑制され、炎症関連酵素シクロオキシゲナーゼの活性が抑制されたことから、アロニアが目の炎症性疾患に対する保護効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15623784
【7】ヒスタミンやセロトニンによって炎症を生じたラットに、アロニアを投与すると、炎症が抑制されたことから、アロニアが抗炎症作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7892768
参考文献
・Bijak M, Saluk J, Ponczek MB, Nowak P. 2012 “Antithrombin Effect of Polyphenol-Rich Extracts from Black Chokeberry and Grape Seeds.” Phytother Res. 2012 Apr 4. doi: 10.1002/ptr.4682. [Epub ahead of print]
・Zapolska-Downar D, Bryk D, Ma?ecki M, Hajdukiewicz K, Sitkiewicz D. 2012 “Aronia melanocarpa fruit extract exhibits anti-inflammatory activity in human aortic endothelial cells.” Eur J Nutr. 2012 Aug;51(5):563-72.
・Sikora J, Broncel M, Markowicz M, Cha?ubi?ski M, Wojdan K, Mikiciuk-Olasik E. 2012 “Short-term supplementation with Aronia melanocarpa extract improves platelet aggregation, clotting, and fibrinolysis in patients with metabolic syndrome.” Eur J Nutr. 2012 Aug;51(5):549-56.
・Ciocoiu M, Miron A, B?descu M. 2008 “New polyphenolic extracts for oxidative stress treatment in experimental diabetes.” Rev Med Chir Soc Med Nat Iasi. 2008 Jul-Sep;112(3):757-63.
・Ohgami K, Ilieva I, Shiratori K, Koyama Y, Jin XH, Yoshida K, Kase S, Kitaichi N, Suzuki Y, Tanaka T, Ohno S. 2005 “Anti-inflammatory effects of aronia extract on rat endotoxin-induced uveitis.” Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005 Jan;46(1):275-81.
・Borissova P, Valcheva S, Belcheva A. 1994 “Antiinflammatory effect of flavonoids in the natural juice from Aronia melanocarpa, rutin and rutin-magnesium complex on an experimental model of inflammation induced by histamine and serotonin.” Acta Physiol Pharmacol Bulg. 1994;20(1):25-30.