アルガンオイル

argania oil

アルガンオイルとは、アルガンという植物の種子から採取される油です。抗酸化力が非常に強く、食用やスキンケア用として幅広く利用されています。
アンチエイジングや肌を美しくする効果、生活習慣病の予防などの働きがあります。

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アルガンオイルとは?

●基本情報
アルガンオイルとは、アカテツ科の広葉常緑樹であるアルガンの種子から採取される油です。
アルガンの樹は、世界でも歴史の長い樹であるといわれています。樹の高さは7~10mほどで、根は地下30mも伸びて水分を吸い上げます。砂漠化を食い止める樹木とされ、アルガンの森は生物圏保存地域に指定されています。
アルガンの樹の木肌はゴツゴツしており、燃料の炭に適しています。このため、多量の樹が伐採され、アルガンの樹の絶滅危機の要因のひとつとなりました。
現在アルガンの樹が生育する地域は限られており、モロッコの南西部にしかありません。
モロッコはアフリカ大陸の北西部にある王国で、ヨーロッパ人のリゾートとして人気の場所です。
アルガンの樹には鋭い棘があります。そのため、オリーブのように手摘みで実を採ることはできません。自然に落ちてきた実を集めています。
アルガンの花は、6月~7月ごろに咲き、9~10月に実をつけます。
アルガンオイルは、モロッコのベルベル人によりクスクス[※1]などに用いる食用油として、またスキンケアなどに用いる薬用、化粧用して利用されてきました。

<豆知識①>ベルベル族とアルガンオイル
モロッコで人口の半数を占めるベルベル人は、北アフリカの広い地域に住み、母国語ベルベル語を話します。
ベルベル人はアルガンの樹からとれるアルガンオイルが治療薬や食物となることを知っていたため、古くから村長の家にアルガンオイルを抽出する作業所があったといわれています。
ベルベル人は、赤ちゃんが生まれるとアルガンオイルをスプーン1杯飲ませ、赤ちゃんの健やかな成長、食べ物に困らないようにと祈りを込めています。
このように、ベルベル人にとってアルガンオイルは生活に不可欠なものであるといえます。

<豆知識②>アルガンの実を落とすヤギ
アルガンの樹は、ヤギが登る木として日本のテレビ番組等で紹介されています。
モロッコのヤギは、アルガンの実や樹皮、葉も食べます。昔はヤギが落としたアルガンの種をベルベル人が拾い、アルガンオイルを採油していました。今では観光客のためヤギを木に登らせています。

●アルガンオイルの抽出方法
アルガンの乾燥した実から仁(種子)を取り出します。アルガンの仁は硬い殻に守られており、仁を傷つけないように取り出すには熟練した技が必要です。
仁をローストしてから石臼で挽く方法で、10時間という時間をかけオイルを抽出します。1本のアルガンの樹から約30kgのアルガンの仁がとれますが、1ℓしかオイルを採取できないため、アルガンオイルは大変貴重なものとして「モロッコの黄金」ともよばれています。

●アルガンオイルに含まれる成分と働き
アルガンオイルは、食用として利用されたり、肌に塗って利用されます。
アルガンオイルの特徴としてオリーブオイルの約2~4倍のビタミンEを含み、オレイン酸が豊富に含まれているという点があります。
オレイン酸は酸化に強いため、加熱調理に向いています。また、肌に使用することにより、肌の水分と油分のバランスを整え乾燥から肌を守ります。さらに、活性酸素を除去する力が強く、日焼けなどで受けたダメージを軽減し、ターンオーバー[※2]を正常に整えます。
この働きを利用して、アルガンオイルは普段のスキンケアに利用されるだけでなく、妊娠線[※3]の予防やベビーマッサージにも利用されます。

[※1:クスクスとは、小麦粉からつくる粒状の粉食、またその食材を利用してつくる料理です。発祥地の北アフリカから中東にかけての地域と、それらの地域から伝わったフランス、イタリアなどのヨーロッパ、ブラジルなど世界の広い地域で食べられています。]
[※2:ターンオーバーとは、肌が生まれ変わる周期のことです。ターンオーバーは20歳頃までは28日前後で生まれ変わるといわれていますが、ターンオーバーは年齢とともに遅れていき、40歳を過ぎると40日以上かかるようになります。年齢とともに肌の透明感やハリが失われる原因のひとつです。]
[※3:妊娠線とは、臨月近い妊婦の腹部の皮膚の真皮や皮下組織にできる亀裂のことです。おなかが大きくなり始める6ヵ月ごろから出始めます。お腹が急激に大きくなることにより皮膚が急に伸ばされ、皮膚の弾性繊維が変性するため妊娠線ができるといわれています。]

アルガンオイルの効果

アルガンオイルには、ビタミンEやオレイン酸が豊富に含まれているため、以下のような働きが期待されます。

●老化を防ぐ効果
ビタミンEは、強力な抗酸化作用によって細胞の酸化を防ぐことから「若返りのビタミン」と呼ばれています。
血液中の過酸化脂質の量は40歳以降に急に増加するといわれています。また、細胞が酸化されると細胞の働きが悪くなり、老化していきます。ビタミンEが豊富に含まれるアルガンオイルを摂取することにより、老化の原因といわれている酸化を抑制し、アンチエイジングに役立つといわれています。
また、アルガンオイルには、抗酸化作用をもつファイトケミカルが含まれており、さらにアンチエイジングに効果的といえます。

●生活習慣病の予防・改善効果
動物性脂肪や乳製品には飽和脂肪酸コレステロールが多く含まれます。こうした食品を摂り過ぎると、血中の悪玉(LDL)コレステロールが過剰に増加します。悪玉(LDL)コレステロールが増加し酸化すると、血管内壁にコレステロールが付着し、血管を塞ぎ、動脈硬化や高血圧、糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。
ビタミンEはコレステロールや脂肪の酸化を防ぎ、血管のしなやかさを保ち生活習慣病の予防や改善に役立つため、生活習慣病の予防や改善に役立ちます。
また、オレイン酸は、善玉(HDL)コレステロールを減少させることなく、悪玉(LDL)コレステロールを減少させ、動脈硬化、心疾患を予防する効果があるということが示唆されています。
これらの栄養素を含むアルガンオイルは、生活習慣病の予防・改善効果があるといえます。【3】【4】【5】

●美肌効果
アルガンオイルは抗酸化力が強いため、皮膚に塗布することによっても肌に潤いを与え、皮膚の血行を促進する効果を発揮するといわれています。
アルガンオイルを肌に塗布することにより肌の水分脂質のバランスを整え、皮膚を柔軟にすることにより乾燥から守ります。さらに、強力な抗酸化力により、皮膚のダメージの原因となる活性酸素を除去します。
また、表皮で生まれた細胞が表面に押し上げられ、最後に垢となって剥がれ落ちるまでの理想的な期間が約28日間であるといわれています。しかし、加齢とともに肌の機能が衰え、このターンオーバーが正常に行われなくなると、周期が乱れるといわれています。アルガンオイルは、そのターンオーバーを促進し、理想的な周期に近づける働きがあるといわれています。
これらの働きをもつアルガンオイルは、美しい肌を保つ働きがあるとされ、近年は地肌のケアだけではなく髪の水分補給やダメージに対する髪の保護のためにシャンプーなどにも利用されています。【1】

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○アンチエイジングに興味のある方
○生活習慣病を予防・改善したい方
○美しい肌を保ちたい方

アルガンオイルの研究情報

【1】アルガンオイルは、抗糖尿病作用や心血管保護作用を有します。また、ほとんど無毒性のため、100年以上にわたってコスメティックアルガンオイルとして肌に直接塗布したり、ヘアローションとして使用されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21054392

【2】アルガンオイルは、15分~30分間、110℃の環境下においても成分として安定していたことが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21442181

【3】アルガンオイルを普段から飲用しているヒト(62名)、飲用していないヒト(34名)を対象に血液中の脂質、ビタミン量、LDLコレステロールの酸化等を調べた結果、飲用していない人に比べて、飲用している人は血中脂質が低く、LDLコレステロール酸化も低く、血中のαトコフェノールが多いことがわかりました。このことから、アルガンオイルは、LDLコレステロール値を下げ、酸化を防ぐ働きがあり、心血管の疾患を防ぐ可能性があることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15380909

【4】健康成人186名を対象に、抗酸化ビタミン(1日当たりビタミンC 120 mg、ビタミンE 30 mg、β-カロテン 6 mg、セレン 100μg、亜鉛 20 mg) を2年間摂取させたところ、血小板活性化の数値で心血管動脈疾患の指標である、尿中PGF1α誘導体が減少しました。ビタミンE を含む抗酸化ビタミンに血流改善作用と、心血管疾患の予防効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17914127

【5】食事・サプリメントによる抗酸化ビタミン(ビタミンC、ビタミンE、β‒カロテンなど)の摂取量と心血管疾患のリスクを調査した研究15件、計381,903名において、ビタミンE摂取量が多いグループは低いグループと比較して、心血管疾患のリスクが低下しました。このことより、ビタミンE をはじめとする抗酸化ビタミンが心血管疾患の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18277182

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参考文献

・山田 豊文 青木 敦子 登石 麻恭子 監修 植物油の事典 ~料理に、美容に、植物油を自分で楽しむ~ 毎日コミュニケーションズ

・Monfalouti HE, Guillaume D, Denhez C, Charrouf Z. (2010) “Therapeutic potential of argan oil: a review.” J Pharm Pharmacol. 2010 Dec;62(12):1669-75. doi: 10.1111/j.2042-7158.2010.01190.x.

・Harhar H, Gharby S, Kartah B, El Monfalouti H, Guillaume D, Charrouf Z. (2011) “Influence of argan kernel roasting-time on virgin argan oil composition and oxidative stability.” Plant Foods Hum Nutr. 2011 Jun;66(2):163-8. doi: 10.1007/s11130-011-0220-x.

・Drissi A, Girona J, Cherki M, Godàs G, Derouiche A, El Messal M, Saile R, Kettani A, Solà R, Masana L, Adlouni A. (2004) “Evidence of hypolipemiant and antioxidant properties of argan oil derived from the argan tree (Argania spinosa).” Clin Nutr. 2004 Oct;23(5):1159-66.

・Arnaud J, Bost M, Vitoux D, Labarère J, Galan P, Faure H, Hercberg S, Bordet JC, Roussel AM, Chappuis P; Société Francophone d’Etudes et de Recherche sur les Eléments Toxiques et Essentiels. (2007) “Effect of low dose antioxidant vitamin and trace element supplementation on the urinary concentrations of thromboxane and prostacyclin metabolites.” J Am Coll Nutr. 2007 Oct;26(5):405-11.

・Ye Z, Song H. (2008) “Antioxidant vitamins intake and the risk of coronary heart disease: meta-analysis of cohort studies.” Eur J Cardiovasc Prev Rehabil. 2008 Feb;15(1):26-34.

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