アラビノース

arabinose
L-arabinose

アラビノースとは、とうもろこしの外皮や甜菜(ビート)、味噌などの発酵食品に含まれる糖質の一種です。
アラビノースは小腸内の消化酵素スクラーゼの働きを阻害するため、ダイエットに効果的です。また、血糖値の上昇を抑制するため、糖尿病にも効果的だといわれています。

アラビノースとは

●基本情報
アラビノースとは、正式名称をL-アラビノースといい、甜菜(ビート)やとうもろこしの外皮などの植物に含まれる糖質の一種で、自然界に広く分布する天然成分です。糖質の中でも5炭糖であるペントースに分類されます。ペントースとは5個の炭素原子を含む単糖のことをいい、アラビノースの他にはD-デオキシリボースやD-キシロースなどがあります。いずれもエネルギー源として利用されることはほとんどないため、ダイエットに適した甘味成分です。
アラビノースは高等植物[※1]の細胞壁中にアラビナンやアラビノキシラン、アラビノガラクタンなどの多糖類の構成成分として存在しています。

●アラビノースの特徴
アラビノースは砂糖(スクロース)の50%程度の甘味を持ちます。
また、小腸内の消化酵素スクラーゼの働きを阻害するため、砂糖(スクロース)の分解を抑制して急激な血糖値の上昇を抑制する働きがあります。アラビノースのこの働きは少量を加えるだけで有効で、多量を摂取してもその効果は特に大きく変わらないという特徴を持っています。
アラビノースはスクラーゼの働きを阻害するという特徴から、「血糖値が気になる方に適する食品」のひとつとして特定保健用食品(トクホ)[※2]にも認定されている成分です。

[※1:高等植物とは、体制の発達した植物のことです。一般に、根・茎・葉に分化し、維管束をもつ種子植物とシダ植物をさします。]
[※2:特定保健用食品(トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]

アラビノースの効果

●ダイエット効果
アラビノースは小腸内で消化酵素スクラーゼの働きを阻害することで、砂糖(スクロース)の分解を抑制するため、ダイエットに効果的な成分です。
太る原因のひとつとして砂糖(スクロース)の摂りすぎがあげられます。砂糖(スクロース)は人間にとって必要な栄養素ですが、過剰に摂取することで、肥満の原因になってしまいます。
砂糖(スクロース)はスクラーゼの働きによって、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解され、体内に吸収されます。これらの糖は人間の体内でエネルギー源となり働きますが、多く摂りすぎてしまうことで脳が余分なエネルギーだと判断し、脂肪として蓄積されてしまうのです。
砂糖(スクロース)は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合した状態だと体内に吸収されません。
そのためアラビノースは、砂糖(スクロース)を分解する消化酵素スクラーゼの働きを阻害するため、砂糖(スクロース)の体内への吸収を抑制し、甘いものを摂りすぎたことによる肥満を抑制する効果があります。
また、無理に甘いものを我慢することなくダイエットができるため、ダイエット食品としても人気の成分です。【1】【2】

●糖尿病を予防する効果
糖尿病とは、インスリンの不足などによって糖代謝がうまくいかなくなる病気です。もともとインスリンが不足している場合と、年齢や生活習慣によってインスリンが不足していく場合があります。糖尿病は血糖値を下げることに加えて血糖値を上げないことが大切です。
血糖値の上昇に関して、アラビノースの効果を調べた研究があります。健常な男女に対して砂糖(スクロース)単独とアラビノース添加砂糖(スクロース)を投与し、2時間後にアラビノースを含まない砂糖(スクロース)入りの市販羊かんを摂取した場合の血糖値推移について検討した結果、アラビノースを摂取したグループは摂取していないグループと比較して、食後の血糖値が有意に低い値を示しました。
また、新たな知見として動物試験ではアラビノースはスクラーゼ阻害を維持延長させる可能性があることが認められました。砂糖(スクロース)とアラビノースを投与すると、それぞれを単独で摂取した場合より緩やかに流れ、腸管内に滞留することを示唆する結果が得られました。
これらのことから、アラビノースは血糖値の急激な上昇を抑制し、糖尿病に対して効果的な成分であるといえます。【1】【2】【3】【4】

アラビノースは食事やサプリメントで摂取できます

アラビノースを多く含む食品

○甜菜(ビート)
○とうもろこし
○味噌や酒などの発酵食品

こんな方におすすめ

○ダイエットをしたい方
○糖尿病を予防したい方
○血糖値が気になる方

アラビノースの研究情報

【1】ラットの試験においてL-アラビノースの摂取が血中のグルコース濃度の上昇を抑制しました。この時、スクロース摂取後の血糖の上昇を抑制したのは、L-アラビノースのもつスクラーゼ活性の抑制によるものだと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8931641

【2】ラットにスクロースを20%添加した飼料を30日間摂取させ、血清中性脂肪、体脂肪および盲腸内容物有機酸量に及ぼすL-アラビノースの作用を調べた結果、 L-アラビノース添加群では血清中性脂肪の上昇が用量依存的に抑制され、また副睾丸脂肪組織重量および後腹壁脂肪組織重量の増加が用量依存的に抑制されたことが分かりました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag1999/47/3-4/47_3-4_355/_article

【3】健常人またはⅡ型糖尿病患者にクロスオーバー試験にて50gスクロースのみ、同量のスクロース+2gL-アラビノースを飲用させた結果、L-アラビノースを飲用した群は血中のグルコースとインスリンを有意に低下させました。この結果から、L-アラビノースは、スクロース誘発性による高血糖を低下させ、その作用は、健常人およびⅡ型糖尿病患者にも有用であることが分かりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10009714805

【4】健常な男女に対してショ糖単独とL-アラビノース添加ショ糖を投与し、2時間後にL-アラビノースを含まないショ糖入りの市販羊かんを摂取した場合の血糖推移について検討しました。その結果、L-アラビノースを摂取したグループは、摂取していないグループに比べて食後の血糖値が有意に低い値を示しました。また、動物試験ではL-アラビノースはショ糖、スクラーゼとともに複合体を形成し、スクラーゼ阻害を維持延長させる可能性が認められました。

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参考文献

・松浦寿喜 よくわかる食品添加物の基本と仕組み 秀和システム

・Seri K, Sanai K, Matsuo N, Kawakubo K, Xue C, Inoue S. (1996) “L-arabinose selectively inhibits intestinal sucrase in an uncompetitive manner and suppresses glycemic response after sucrose ingestion in animals.” Metabolism. 1996 Nov;45(11):1368-74.

・Makoto Fujii,  Makirou Hatozoe,  De-Xing Hou,  Hiroo Sanada,  Shigemitsu Osaki,  Susumu Hizukuri (2000) “Effects of L-Arabinose on Serum Neutral Lipid, Weights of Fat Pads and Cecum, and on Organic Acids in Cecum in Rats” J Appl Glycosci 2000 47, 355-361

・井上 修二、讃井 和子、世利 謙二 (2000) “ヒトにおけるショ糖含有食品摂取後の血糖上昇に及ぼすL-アラビノースの作用” 日本栄養・食糧学会誌、第53巻第6号243-247(2000)

・柴沼 清 (2010) “L-アラビノースの機能性とその利用分野” ジャパンフードサイエンス Vol.49 No.11 2010 pp.67-71

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