アラビノキシランとは?
●基本情報
アラビノキシランとは、コメやムギ、とうもろこしなどのイネ科植物に含まれるヘミセルロースの主成分です。
しかし、白米には含まれていません。玄米から精白する過程で取り除かれるコメぬかの中に、ごくわずかの量のアラビノキシランが含まれています。
従来、アラビノキシランは、米ぬかから分離抽出されたヘミセルロースをさらに酵素反応などによって小さく切り出す方法でつくられていましたが、近年ではとうもろこしからもつくられるようになりました。
米ぬかから分離抽出されたヘミセルロースに、シイタケやスエヒロダケなどの菌糸体に含まれる酵素を作用させることでアラビノキシランが得られます。このアラビノキシランは、近年様々な研究がされており、免疫増強作用や脂質代謝改善作用を持つとして、注目を集めています。
この他にも、クマザサ由来のアラビノキシランなども存在します。
●アラビノキシランの働き
ヘミセルロースなどの食物繊維は腸で消化されずそのまま排泄されますが、アラビノキシランは分子構造が小さいため、小腸で吸収され血液に入ります。
すると、血液中のマクロファージ[※1]やNK細胞[※2]が活性化され、全身の免疫レベルが高まります。中でも、NK細胞はアラビノキシランの刺激でインターフェロンγ[※3]を産生し、さらに細胞内のパーフォリン[※4]の形成を促してガン細胞への攻撃力を強めることがわかってきました。
アメリカの免疫学者マンドー・ゴーナム博士によれば、ガンの患者に米ぬかからつくられたアラビノキシランを投与した結果、いずれも病状の回復または自覚症状改善、薬物治療(抗ガン剤)の副作用の軽減などの有用性が認められました。
[※1:マクロファージとは、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]
[※2:NK細胞(ナチュラルキラー細胞)とは、リンパ球に含まれる免疫細胞のひとつで、生まれつき(ナチュラル)外敵を殺傷する(キラー)能力を備えています。ガン細胞やウイルス感染細胞などの異常細胞を発見して退治してくれます。]
[※3:インターフェロン-γとは、Tリンパ球によって生産される生物学的応答調節物質です。 ほかのインターフェロンとは異なり、マクロファージを活性化する能力を持ちます。]
[※4:パーフォリンとは、NK細胞がガン細胞を壊したり、ウイルスに犯された細胞を壊したりする際に必要な物質です。]
アラビノキシランの効果
●免疫力を高める効果
人間の体には外からの細菌やウイルスから身を守るため免疫機能が備わっています。
アラビノキシランは、常に体内を監視し、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)という細胞を、活性化させる働きがあります。
また、その他にもインターフェロン-γやTNF-α[※5]の産生を増加させる働きがあるといわれています。
最近では、アラビノキシランの免疫力を高める効果はAIDS[※6]にも有効であるともいわれ、研究が進められています。
アラビノキシランは経口摂取することにより免疫細胞および血清成分に影響を与えることは明らかになっており、さらにHIVの増殖を抑える働きがあることも証明されています。【1】【2】【3】
●ガンを予防および抑制する効果
アラビノキシランは、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、インターフェロン-γ、パーフォリンの産生を増加させる働きがあります。そのため、ガン細胞への攻撃力を高めることが近年わかってきました。
また、アラビノキシランは、様々な疾患に効果があるといわれており、その中でも注目されている疾患としてB型・C型肝炎、肝ガン、大腸ガンなどがあります。【5】
●活性酸素を除去する効果
近年、ガンや脳卒中などの生活習慣病は大きな社会問題となっています。この生活習慣病の発病には、高い確率で活性酸素が関与しています。
活性酸素は、紫外線や喫煙、ストレスなどが原因で体内に発生し、細胞や血管など体の様々なところにダメージを与えます。
また、活性酸素は生活習慣病だけでなく、老化やその他の病気を引き起こす原因だといわれています。
アラビノキシランには、強い抗酸化作用があるため、活性酸素を除去する効果があります。
[※5:TNF-α(腫瘍壊死因子(TNF:Tumor Necrosis Factor))は、主にマクロファージにより産生される、ガンに対して出血性の壊死を生じさせるサイトカインのことです。]
[※6:AIDSとは、Acquired(後天性) Immune(免疫) Deficiency(不全) Syndrome(症候群) の頭文字をとった病名です。HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)と呼ばれる病原体に感染することで発症し、免疫機能を低下させ、様々な合併症を引き起こします。]
食事やサプリメントで摂取できます
アラビノキシランを多く含む食品
○コメ
○ムギ
○とうもろこし
こんな方におすすめ
○免疫力を高めたい方
○ガンを予防したい方
○生活習慣病を予防したい方
○老化を予防したい方
アラビノキシランの研究情報
【1】米の多糖類のひとつであるアラビノキシランは、リポポリサッカライド誘発致死性敗血症モデル動物の生存率の改善が認められました。
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902180131656726
【2】米から抽出・精製したアラビノキシランであるMGN-3は、NK細胞、T細胞、B細胞のように種類の異なる免疫機能を刺激します。また、MGN-3は、濃度依存的かつ有意にTNFα、IL-6の様なサイトカインの発現を高め、また活性酸素を増やす働きがあることが分かりました。これらのことからアラビノキシランには、微生物感染症に対し、有効である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15461862
【3】イネアラビノキシラン誘導体は、ラットおよびヒトに経口的に投与することによって、免疫細胞を刺激し、in vitroでのHIVの増殖を抑制することが分かりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10021178768
【5】アラビノキシラン(MGN-3)を肝臓ガン患者(ステージⅠまたはⅡ)68名に対し介入療法(化学塞栓療法など含む)と併用させた結果、生存率が高くなることがわかりました。このことから、アラビノキシランとの介入療法は、肝がんを抑制する可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21187503
参考文献
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社
・Ghoneum M, Matsuura M. (2004) “Augmentation of macrophage phagocytosis by modified arabinoxylan rice bran (MGN-3/biobran).” Int J Immunopathol Pharmacol. 2004 Sep-Dec;17(3):283-92.
・前田浩明 (2000) “新規生理活性物質イネアラビノキシラン誘導体(MGN-3)”日本未病システム学会雑誌 2000 6(2)65-67
・物部 真奈美、山本 前田 万里、松岡 由記 、金子 明裕、平本 茂 (2008) “小麦ふすまアラビノキシランの免疫賦活作用とその分子量特性” Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology 55(5), 245-249, 2008-05-15
・Bang MH, Van Riep T, Thinh NT, Song le H, Dung TT, Van Truong L, Van Don L, Ky TD, Pan D, Shaheen M, Ghoneum M. (2010) “Arabinoxylan rice bran (MGN-3) enhances the effects of interventional therapies for the treatment of hepatocellular carcinoma: a three-year randomized clinical trial.” Anticancer Res. 2010 Dec;30(12):5145-51.
・Ghoneum, Mamdooh; Namatalla, Galal. (1996) “NK immunomodulatory function in 27 cancer patients by MGN-3, a modified arabinoxylane from rice bran.” 87th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research April 20-24,1996 Washington,DC
・Mamdooh H. Ghoneum, (1995) “Immunomodulatory and Anti-Cancer Properties of (MGN-3), a modified xylose from rice bran, in 5 Patients with Breast Cancer.” An AACR S pecial Conference Baltimore,Maryland November 5-8,1995