りんごポリフェノール

apple polyphenol

りんごポリフェノールとは、りんごの皮に特に多く含まれるポリフェノールの一種で、強い抗酸化力を持ちます。活性酸素を除去する効果や、血流を改善する効果、口臭を予防する効果、肌を美白へ導く効果など様々な効果を持つ優れた成分です。

りんごポリフェノールとは

●基本情報
りんごポリフェノールとは、りんごに含まれるポリフェノールの一種で、りんごに含まれる様々なポリフェノールの総称です。特に熟していないりんごの皮に多く含まれています。
ポリフェノールとは、光合成によってできる植物の色素や苦み、渋みの成分となる化合物の総称で、その種類は5000種類以上あるといわれています。ブルーベリーに含まれるアントシアニンや、サンタベリーに含まれるレスベラトロールもその一種です。全てのポリフェノールには強い抗酸化力があり、活性酸素から体を守る役割があります。
りんごポリフェノールは、カテキンがいくつかつながったプロシアニジン[※1]が主成分となっています。強い抗酸化力を持つ水溶性の素材で、食品や化粧品の機能性原料として利用されています。
活性酸素を除去する力に優れており、血流改善やコレステロール値の低下抑制などに役立ちます。また、口臭予防や美白効果、ダイエット効果もあり、ヨーロッパでは「1日1個のりんごが医者を遠ざける」といわれる程、注目の高い成分です。

●りんごポリフェノールの歴史
ポリフェノールは、1989年のWHO(世界保健機関)の、「フランス人は動物性脂肪などを多く摂取しているにも関わらず心臓病や脳梗塞、動脈硬化での死亡率が低い」という報告によって注目され始めました。これはフレンチパラドックスと呼ばれ、フランス人が常時飲用している赤ワインに含まれるポリフェノールにその秘密が隠されているのではないかと考えられました。
その後、様々な研究がなされ、1998年にりんごにもポリフェノールが含まれていることが判明し、人間の体にとって様々な効果を発揮することがわかりました。

●りんごポリフェノールの性質と働き
りんごポリフェノールにはプロシアニジン、カテキン、エピカテキン、クロロゲン酸[※2]、ケルセチンなど様々なポリフェノールが含まれています。
中心となるのはプロシアニジンで、エピカテキンやカテキンがいくつかつながった構造をしています。一方、空気には弱い性質があります。りんごを切ったりすったりして置いておくと、酸素と結合し変色する性質を持ちます。
一般的にりんごは皮を剥いて食べますが、りんごポリフェノールは皮に多く含まれているため、皮ごと食べる方が多く摂取することができます。
りんごポリフェノールの働きは非常に多く、その抗酸化力から、体内の活性酸素を除去し、血流を改善し、動脈硬化を防ぐ働きがあります。またそれ以外にも、ビタミンEの消耗を防ぐ働きや、脂肪吸収の抑制効果がある事が動物実験でわかっています。
最近の研究では、長寿遺伝子を活性化させて寿命をのばす作用があると発表されています。

<豆知識①>りんごの変色の原因
りんごは切って放置しておくと、色が茶色く変色する性質があります。これは、りんごポリフェノールが空気に触れ、酸素と結合して起こる褐変によるものです。
切ったりんごは塩水に浸す、または、レモン果汁をかけることで変色を防ぐことができますが、これは結果的にりんごポリフェノールの減少を防ぐことができるのです。また、変色してしまったりんごをレモン果汁に浸すことで、一度酸素と結合してしまったりんごポリフェノールから酸素が切り離されるため、色を元に戻すことができます。

[※1:プロシアニジンとは、カテキンがいくつか結合した構造を持ち、きわめて強い抗酸化作用を示すポリフェノールです。]
[※2:クロロゲン酸とは、ポリフェノールの一種です。多機能を持つ成分であり、コーヒー豆に含まれる成分として知られています。]

りんごポリフェノールの効果

●老化や病気から体を守る効果
りんごポリフェノールは強い抗酸化力を持つため、体内の活性酸素を除去する効果があります。
本来、活性酸素は体内に入ってきたウイルスを攻撃し体を守る働きがあり、必要不可欠なものですが、紫外線やストレスの影響により体内に増えすぎてしまうことで、正常な細胞まで攻撃してしまい老化を促進させたり、疾病を招いたりしてしまいます。現代人は、多くのストレスを抱えており、それによって体内に活性酸素が増えすぎている状態にあります。
このような活性酸素から体を守る働きがあるのが、強い抗酸化力を持つりんごポリフェノールです。りんごポリフェノールは、体内に増えすぎた活性酸素を除去し、老化や疾病から守る効果があります。【3】【6】

●血流を改善する効果
りんごポリフェノールには、脂質の酸化を防ぐことで血流を改善する効果があります。
脂質が酸化すると、体内に悪玉(LDL)コレステロールが増え、血液をドロドロしたものに変えます。そのため動脈硬化などの生活習慣病につながる危険性があります。動脈硬化とは、増えすぎた悪玉(LDL)コレステロールが血管壁に付着し、血管が固くもろいものになることをいいます。
りんごポリフェノールには、その強い抗酸化力で脂質の酸化を防ぐため、血流を改善し、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果があるといえます。

●口臭を予防する効果
口臭の主な原因は、メチルメルカプタンといわれる成分です。これが口内で増加することによって口臭が発生しますが、りんごポリフェノールにはこのメチルメルカプタンの増加を半分以下に抑える働きがあります。また、虫歯菌が出す歯垢形成酵素の働きを阻害することも明らかとなっています。
このことから、りんごポリフェノールには口臭を予防する効果があるといえます。

●美白効果
シミやそばかすの原因として、メラニン色素の形成が挙げられますが、本来メラニン色素は人間の体を紫外線から守る働きをしています。メラニン色素がつくられなかった場合、皮膚の奥深くまで紫外線が入り込み、紫外線を少し浴びただけで、水ぶくれや炎症を起こします。また、紫外線によってDNAが破壊され、皮膚ガンなどになる可能性もあります。
つくられたメラニン色素は、皮膚の細胞の生まれ変わりによって剥がれ落ちていきます。これをターンオーバーといいます。しかし年齢とともにターンオーバーのサイクルが遅くなり、皮膚の細胞が生まれ変わりにくくなってしまいます。それによって、皮膚表面にメラニン色素が残り、シミやそばかすをつくってしまうのです。
りんごポリフェノールには、メラニン色素の過剰な生成を抑制する働きがあり、美しく白い肌へと導く効果があります。また、最近ではスキンケア商品にも配合されるようになっており、紫外線をカットする働きがあることも確認されています。【11】

●アレルギーを抑制する効果
りんごポリフェノールには、アレルギーを引き起こす酵素の働きを抑制する効果があります。
アレルギーとは、免疫反応が特定の刺激に対して過剰に起こることをいいます。りんごポリフェノールには、この過剰反応を抑制する効果があることが、実験の結果から明らかとなっています。【7】【10】

●ダイエット効果
りんごポリフェノールには、脂肪を分解する酵素であるリパーゼの活性を抑制する働きがあるため、食事で摂取した脂肪分が小腸から吸収されることを防ぎ、排泄する働きがあります。また、肝臓にある脂肪を合成する脂肪酸合成酵素の働きを抑制し、脂肪をエネルギー源として燃やす酵素を活性化させる働きがあります。
このことから、りんごポリフェノールはダイエットに効果的な成分であるといえます。【1】【8】【9】

●コレステロール値を下げる効果
りんごポリフェノールには、脂肪の吸収を阻害するだけでなく、コレステロール値を下げる効果があるとされています。
臨床試験では、りんごポリフェノール600mgを摂取した後、食事を行ったヒトの血液を検査すると血中のコレステロール値や中性脂肪値が約20%下がったという報告もあります。【8】【9】

●老化を防ぐ効果
りんごポリフェノールには、長寿遺伝子を活性化させて寿命をのばす作用があると報告されています。長寿遺伝子を活性化する
効果でよく知られているレスベラトロールと似た働きを持っています。

<豆知識②>りんごポリフェノールは食事前の摂取が効果的
りんごポリフェノールは、脂肪の吸収を抑制する効果があるため、食事前に摂取することが効果的です。
食事前に摂取することで、脂肪を分解する酵素リパーゼの活性を抑制し、小腸からの吸収を防ぎます。また、りんごにはペクチンという多糖類が含まれており、人間の体内では食物繊維として機能し、脂肪の吸収を阻害し、コレステロールの排泄を促進する働きもあります。

食事やサプリメントで摂取できます

りんごポリフェノールを含む食品

○りんご

こんな方におすすめ

○老化を防ぎたい方
○血流を改善したい方
○動脈硬化を予防したい方
○口臭が気になる方
○シミ、そばかすが気になる方
○アレルギー症状を緩和したい方
○肥満を防ぎたい方
○コレステロール値が気になる方

りんごポリフェノールの研究情報

【1】ラットへのりんごポリフェノールの経口摂取は、血中トリアシルグリセロールを減少させ、血清のアテローム誘発指数を低下させました。また、アンモニア濃度の減少、HDL/総コレステロール比の増加をもたらしました。これらのことからりんごポリフェノールは、アテローム性動脈硬化症の予防につながると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21805963

【2】トリニトロベンズスルフォニル酸誘発大腸炎のラットへ100μMりんごポリフェノールエキス(APE)14日間の直腸投与を行いました。その結果、炎症性物質であるCOX2、TNFαの発現を抑制し、また、カルパインによって分解する組織トランスグルタミナーゼタンパク質の分解を抑制しました。このことから、リンゴエキスは、大腸炎に対して有効であり、COX2およびTNFαの抑制であると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22381211

【3】ラットを3群(C:コントロール群、A: 飼料-14%加工リンゴ搾り群、AP:飼料-15%非加工リンゴ搾り)に分け調べました。C群と比較して、A群は盲腸のpH、アンモニア濃度、βグルクロニダーゼ活性を減少させました。A群は、赤血球のSOD活性、血清抗酸化を高めました。さらに、AP飼料の4週間にわたる投与は、血清グルコース濃度を有意に減少させました。このことから、リンゴのようにポリフェノールを多く含む食べ物は抗酸化作用が強く胃腸の生理にとって有効であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21867578

【4】強力な抗酸化活性をもつリンゴの皮ポリフェノール抽出(APPE)の安定性についてin vitroで評価し、胃腸損傷に対する保護作用についてインドメタシンを用いて検討しました。インドメタシン誘発胃腸損傷はAPPE投与することによってダメージの指標である酸化ストレスやマロンジアルデヒドが抑制されました。これらのことから、りんごポリフェノールは、非ステロイド性抗炎症薬の副作用を防止する働きがある可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21548634

【5】拘束負荷マウスをインフルエンザウイルスに感染させ、それらのストレスに対するりんごポリフェノール(APE)の作用について調べました。拘束ストレスはH1N1ウイルスに感染させたマウスの致死率を大幅に上げましたが、APE100mg/kg、および200mg/kgを経口投与させたマウスは生存率を高め、用量依存的にインフルエンザウイルスを抑えました。また、APEはナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ヘルパー細胞などの免疫系の細胞の活性を高めました。これらのことからAPEは、インフルエンザウイルスに対して有効な働きを示すことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21401102

【6】四塩化炭素(CCl4)誘発におけるマウス肝障害に対するりんごポリフェノール(AP)に対する作用について調べました。CCl4投与前、7日間にわたってAPを200、400、800mg/kgを投与しました。AP投与は、有意にCCl4誘発急性肝障害に伴う血清ALTおよびASTのレベルを下げ、病理学的組織の調査では、著名に改善されていることが確認されました。またin vitroにおいてDPPHラジカル補足能およびラット肝ホモジネート脂質過酸化抑制作用を示しました。これらのことから、APは、抗酸化作用によって、急性肝障害を抑える働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20415417

【7】リンゴの摂取は、アトピー性皮膚炎を抑制する可能性が考えられています。リンゴエキスに含まれるポリフェノールアトピー性皮膚炎、呼吸性アレルギーへの有効性およびメカニズムについて調べました。りんごポリフェノール摂取はマウスのサイトカイン分泌を抑制し、ヘルパーT細胞の炎症誘発物質の発現を抑制しました。このことから、りんごポリフェノールのアレルギーの抑制は、サイトカインの抑制、またはアレルギー誘発物質を抑制する働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20175787

【8】ラットに対して未熟リンゴから抽出したポリフェノール(AP)がコレステロール血症、アテローム硬化症を予防するか検討しました。コントロール群と比較して、AP群(AP 0.5-1%摂取)では、有意に肝臓コレステロールが低下しました。また、HDLコレステロールがコントロール群と比較し、有意に増加しました。これらのことからりんごポリフェノールの摂取は、コレステロールの吸収を阻害し、アテローム硬化症を予防すると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17707979

【9】4週齢ラットに対し3週間、0.5%または2.5%のりんごポリフェノール(APP)-0.3%コレステロール酸化生成物(COP)を与えました。また、APPが過酸化脂質の上昇を抑制しました。このようにAPPは、加工食品やファーストフードに含まれるCOPのような外因性の有害物質の重要な除去剤となると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17393221

【10】Ⅰ型アレルギーを誘発させたマウスに対してリンゴタンニン(ACT)の抗アレルギー作用について調べました。アレルギー(耳腫張)マウスに対し、ACTを0.1~10mg経口投与させた結果、用量依存的に耳腫脹を抑制し、最高で90%アレルギーを抑制しました。このことから、ACTは、Ⅰ型アレルギーに対して有効であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11085368

【11】りんごポリフェノールがB16マウスメラノーマ細胞でのメラニン生成に及ぼす作用を検討しました。その結果、りんごポリフェノールのメラニン生成抑制効果は、アルブチンまたはコウジ酸よりも強いことがわかりました。また、ポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンは、チロシナーゼを阻害しました。これらのことから、りんごポリフェノールは、美白作用を有する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16029003

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参考文献

・からだに効く 栄養成分バイブル 発行:主婦と生活社 著者:坪内勇

・栄養の教科書 発行:新星出版社 著者:中嶋洋子

・日経ヘルスサプリメント事典 第4版 発行:日経ヘルス

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・D’Argenio G, Mazzone G, Tuccillo C, Ribecco MT, Graziani G, Gravina AG, Caserta S, Guido S, Fogliano V, Caporaso N, Romano M. (2012)  “Apple polyphenols extract (APE) improves colon damage in a rat model of colitis.” Dig Liver Dis. 2012 Jul;44(7):555-62. Epub 2012 Feb 28.

・Juśkiewicz J, Zary-Sikorska E, Zduńczyk Z, Król B, Jarosławska J, Jurgoński A. (2011) “Effect of dietary supplementation with unprocessed and ethanol-extracted apple pomaces on caecal fermentation, antioxidant and blood biomarkers in rats.” Br J Nutr. 2012 Apr;107(8):1138-46. Epub 2011 Aug 26.

・Carrasco-Pozo C, Speisky H, Brunser O, Pastene E, Gotteland M. (2011) “Apple peel polyphenols protect against gastrointestinal mucosa alterations induced by indomethacin in rats.” J Agric Food Chem. 2011 Jun 22;59(12):6459-66. Epub 2011 May 19.

・He RR, Wang M, Wang CZ, Chen BT, Lu CN, Yao XS, Chen JX, Kurihara H. (2011) “Protective effect of apple polyphenols against stress-provoked influenza viral infection in restraint mice.” J Agric Food Chem. 2011 Apr 27;59(8):3730-7. Epub 2011 Mar 14.

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・Osada K, Suzuki T, Kawakami Y, Senda M, Kasai A, Sami M, Ohta Y, Kanda T, Ikeda M. (2006) “Dose-dependent hypocholesterolemic actions of dietary apple polyphenol in rats fed cholesterol.” Lipids. 2006 Feb;41(2):133-9.

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