アニス

anise
遏泥子
Anisum pimpinella

アニスとは、セリ科の一年草で、ハーブの一種です。
古くから薬草やスパイスとして扱われ、最近ではケーキやクッキーの飾り付け、またはハーブティーとして親しまれています。循環器機能の保持やエストロゲン類似作用を持つため、気管支炎や更年期障害などに効果的です。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

アニスとは

●基本情報
アニスとは、地中海東部沿岸原産のセリ科に属する一年草[※1]で、古くからハーブの一種として親しまれています。また、リキュール[※2]の素材としても知られています。
学名を「Anisum pimpinella(アニスム ピムピネルラ)」といい、ラテン語で「2つの羽状」を意味する「dipinella」に由来しています。葉の上部と下部とで形が違い、上部が切れ込んで羽のように3つに分かれているため、このような名前がついたといわれています。また、和名を茴芹(ういきょう)といいます。
アニスは夏になると小さな白い花を咲かせ、草丈は60cm程にまで成長し、葉は鮮やかな緑色をしています。半耐寒性の特徴を持ち、肥沃な砂質でPH6.0~7.5の土壌を好みます。アニスはアブラムシやアオムシを寄せ付けず、またハチを誘って受粉を助けるなど他の植物を一緒に植える利用もできます。
アニスの香りはスパイシーで、また味覚としては少し刺激のある甘さを持っています。香り成分は熱に強く、焼き菓子やスープの香りづけにも使われます。

●アニスの歴史
アニスは古代エジプトでミイラをつくる際、主要な防腐剤として利用されていました。また、薬草やスパイスとしても扱われていたといわれています。
イギリスでは、修道院でしかアニスが栽培されておらず、高価なスパイスとして輸入されていました。1305年にエドワードⅠ世がロンドン橋を通過するアニスに特別税を掛け、その税金がロンドン橋の修復費用に充てられました。
古代ギリシアの時代には主に薬草として扱われ、母乳の分泌を促進する、あるいは分泌期間を延ばすものとして信じられてきました。また、魔よけとしての効能を持つとも信じられていたといわれています。
古代ローマ人は胃もたれを解消するため、アニスケーキを宴会のデザートとして食したといわれています。この風習はウエディングケーキの由来となっています。
日本には明治初期に伝来し、現在でも少量栽培されています。

●アニスの利用
アニスの利用部位は主に果実です。この果実は種のように見えることから「アニシード」と呼ばれ、香辛料として様々な料理の香り付けや臭い消しに使用されます。
また、アニスは葉や茎、花、根も食用とされ、葉、茎、花はサラダに、根はスープやシチューなどの煮込み料理に利用されます。
アニスは現在ではマウスウォッシュの成分としても知られているほか、種子から抽出されるアニス油を医薬品や化粧品に利用しています。

●アニスに含まれる成分と性質
アニスのスパイシーな香りは、芳香成分であるアネトールによるものです。また、その他にアニスケトン、リモネン、アニスアルコールなどを含んでいます。
また、アニスシードにはサポニンが含まれており、風邪や気管支炎などの時に痰を除いたり咳止めのために利用されます。
また女性ホルモンであるエストロゲン[※3]と似た作用を持つため、女性特有のトラブル解消のためにもよく利用されています。
女性ホルモンに影響を及ぼすことから、妊娠中・授乳中の女性の使用は注意が必要です。

[※1:一年草とは、春にまいた場合はその年の秋から冬、秋にまいた場合は翌年の秋から冬に枯れる草のことです。]
[※2:リキュールとは、蒸留酒に果実・香草・薬草などのフレーバーを加え、砂糖やシロップなどの糖分や、着色料を添加してつくった酒の総称です。]
[※3:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]

アニスの効果

●気管支炎を予防・改善する効果
アニスには、気管支炎を予防・改善する効果があります。
気管支炎とは、呼吸器疾患のひとつで気管支の炎症のことを指します。急性と慢性に区分され、喫煙や周りの人間による受動喫煙などの健康被害により、症状が悪化・慢性化してしまいます。
アニスの種であるアニスシードには、痰を切る作用にすぐれたサポニンが含まれています。サポニンとは、植物の根、葉、茎などに広く含まれている配糖体[※4]の一種で、苦味やエグみなどのもととなる成分のことです。サポニンを適量摂取することにより、肺に侵入してきたごみや異物を排除する気管の分泌液が促進され、痰が出やすくなることがわかっています。そのため、咳を鎮めたり、痰を除く薬として利用されています。
このことからもアニスには、気管支炎を予防・改善する効果があるといえます。【1】

●更年期障害の症状を改善する効果
アニスに含まれる芳香成分・アネトールは女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きを持つため、更年期障害の予防や改善に効果的だといわれています。
更年期を迎えると女性ホルモンが分泌されにくくなり、めまいや耳鳴りなど様々なトラブルを引き起こします。
また、女性ホルモンは骨からカルシウムが溶け出すのを抑える役割も持っているため、女性ホルモンの減少は骨粗しょう症の原因のひとつといえます。
アニスに含まれるアネトールは、女性ホルモン・エストロゲンと似た作用を持つため、更年期障害を予防・改善する効果があるといえます。
また、それ以外にも生理痛を軽減させたり、生理周期を整えたりと女性特有のトラブルにも効果を持ちます。【2】【3】

●腸内環境を整える効果
アニスは、腸内の環境を整える効果があると考えられています。
アニスはお腹を温め、特に豆類を食べた後ガスを排出し、げっぷや吐き気、慢性下痢、腹痛、消化不良などに効果を発揮するといわれています。食後、胃が重たく感じるような時に活用されています。【4】【5】

他にも、口臭予防や利尿作用、鎮静効果などの効果が知られています。【4】

[※4:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し,植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]

アニスは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○夜盲症を予防・改善したい方
○貧血を予防・改善したい方
○高血圧を予防・改善したい方
○便秘を予防・改善したい方
○疲労を回復したい方
○夏バテを予防したい方

アニスの研究情報

【1】アニスにはサポニンのtimosaponin B-II及びキサントンのMangifeerin が多く含まれています。timosaponin B-II は血糖降下作用が、Mangifeerinに胆汁うっ滞改善作用、慢性気管支炎改善作用があることが知られていることから、アニスは気管支炎予防効果が期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008908458

【2】アニスを含んだギリシアの植物の薬効作用を調査したところ、エストロゲン受容体調節物質を示し、骨芽性の細胞数を増やすことがわかりました。アニスに骨粗鬆症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15537303

【3】卵巣摘出ラットに対し、アニスを4% 含有するエキスを飲用させた結果、飲用していない群よりも有意に骨密度が上昇していることが分かりました。また、骨密度マーカー(アルカリフォスファターゼやオステオカルシン)も上昇していることが分かりました。このことから、アニスエキスは、そのエストロゲン様作用により卵巣摘出誘発-骨密度減少を抑制し、骨粗鬆症予防効果が期待されています。
http://www.nwpii.com/ajbms/papers/AJBMS_2011_1_06.pdf

【4】成人男女20,630名において、性別や摂取栄養素、ライフスタイルと排便回数との関係を調査した結果、食物繊維が多い人ほど、排便回数が多いことが確認されました。アニスは食物繊維を含むことから、腸内環境を整えるはたらきが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14972075

【5】17名男性大学生ランナーに5kmを走る2時間前にクエン酸塩(0.5kg/body mass)またはプラセボを投与しました。プラセボ群に比べ、クエン酸塩投与群は、5km走のタイムがプラセボ群と比べて有意に縮まっていました(クエン酸塩投与群:1153.2秒、プラセボ群:1183.8秒)。このことから0.5kg/body massのクエン酸塩の摂取は、短時間での運動のパフォーマンスを向上させることが確認されています。アニスはクエン酸を含むことから、疲労回復および持久力維持に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14665584

もっと見る 閉じる

参考文献

・Rosemary Gladstar 著 ストレスに効くハーブガイド フレグランスジャーナル社

・佐々木薫 ハーブティー事典 池田書店

・ヴィクトリア・ザック ハーブティーバイブル 東京堂出版

・Drogoudi PD, Vemmos S, Pantelidis G, Petri E, Tzoutzoukou C, Karayiannis I. (2008) “Physical characters and antioxidant, sugar, and mineral nutrient contents in fruit from 29 apricot (Prunus armeniaca L.) cultivars and hybrids. J Agric Food Chem. 2008 Nov 26;56(22):10754-60. doi: 10.1021/jf801995x.

・Hwang HJ, Kim P, Kim CJ, Lee HJ, Shim I, Yin CS, Yang Y, Hahm DH. (2008) “Antinociceptive effect of amygdalin isolated from Prunus armeniaca on formalin-induced pain in rats.” Biol Pharm Bull. 2008 Aug;31(8):1559-64.

・Whelton PK, He J, Cutler JA, Brancati FL, Appel LJ, Follmann D, Klag MJ. (1997) “Effects of oral potassium on blood pressure. Meta-analysis of randomized controlled clinical trials.” JAMA. 1997 May 28;277(20):1624-32

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ