アムラ

Amla
インディアン・グーズベリー ヨカンシ コミカソウ ユカン アマラキ アンマロク

アムラは「若返りの果実」として、インドの伝承医学「アーユルヴェーダ」において、様々な病気や老化を防ぐ効果があると重宝されています。インドでは、日常生活でも美容と健康に欠かせない果実として、現在も不動の地位を保っています。

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アムラとは?

●基本情報
アムラとはトウダイグサ科コミカンソウ属の落葉性の小高木で、日本では別名「インドスグリ」とも呼ばれています。サンスクリット語では看護婦(母のように治療ができる人)との意味から「アムラキ(Amlaki)」、英語で「インディアング―ズベリー(Indian Gooseberry)」と表記されます。
アムラの果実は、3~4㎝の球形や卵形の小さな果実で、葉柄は非常に短く1つの刺があります。収穫時は宝石のような透明感のある薄い黄緑色ですが、乾燥すると黒色になります。中には種が6個入っており、食べると強烈な酸っぱさの中に、苦みと渋みがあります。
アムラの木は高さ7~10mほどで、幹は細く、葉は長さ約10mm、幅約2~3mmの長方形型をしていて、小枝に2列に互生しています。そして4~5月に黄色の花を咲かせます。

●アムラの歴史および文化
アムラは昔から、健康のシンボル、縁起のいい木として人々から尊ばれてきました。
ヴェーダ(西紀前1500年頃)の時代、聖者チャヴァンがアムラに滋養強壮の作用があることを発見し、アムラの素晴らしさを人々に伝えたのが始まりです。
近年、日本でも雑誌やテレビなどで頻繁に取り上げられ関心を集めているインドの伝承医学「アーユルヴェーダ」[※1]でも、重要なハーブのひとつとして位置付けられています。「生命を活性化させ、活力を取り戻す」とされるアムラの果実は、アーユルヴェーダにおいて頻繁に使われ、伝統的な若返りのハーブだとみなされています。
ヒンドゥー教では、4月に「Amla Navami」という自然と生物への慈愛の祭りがあります。Amla Navamiでアムラは“繁殖と豊穣の象徴”とされ崇められます。アムラの果実のペーストを含む水がヒンドゥー教の神ヴィシュヌ像に注がれ、アムラの木の下で作られた料理がヴィシュヌに捧げられます。アムラの木の周りに人々は集まり、花が咲いて実がなることを祈ります。

●アムラの利用方法
アムラには、食用、薬用、美容と様々な用途があります。果実・種・葉・根・幹・花などほぼすべてが利用されます。最もよく利用される部分は果実でサプリメントや食品、お茶に用いられています。
インドでは熟した果実を生で食べることもありますが、一般的には、酸味と苦味があるため、塩や油・スパイスとともにアチャール[※2]にしたり、サラダやジャムにして食べられ重宝されています。インドでは体調が悪い時、ムラッパ(murabba)という、アムラの新鮮な果実を煮つめて砂糖につけ込んだ砂糖漬けを食べます。また、南インドでは漬物として食べられることが多くあります。

アーユルヴェーダでは、アムラは様々な症状に対して使われています。その効能は、糖尿病、肝機能障害、貧血、痛風、動脈硬化、様々な炎症、眼病、喘息、骨粗しょう症[※3]、便秘など多岐にわたるとされています。
中国ではアムラの乾燥果実を下痢、胆石などの治療薬に使用し、西洋医学でも消化機能の亢進や心疾患などに用いることがあります。
アムラの実を一晩水に浸けたもので目を洗うと、目の疲れが早く回復するといわれ、アムラの汁をはちみつと混ぜて毎日飲むと、視力回復を助け、緑内障にも良いといわれています。
葉や樹皮・幹を染色剤としたり、タンニンを多く含む未熟果実や樹皮を染色の色止めにしたりされています。その他、肌や口腔内の洗浄や抗酸化作用を期待して日焼け止めにも利用されています。

●アムラの原産地・産地
アムラの原産地はインドです。
アムラは、インド、インドシナ、台湾、中国南部の海抜1500m以上の山の斜面に自生し、熱帯・亜熱帯の気候の地域でよく見かけることができます。果実を採る時期は、アムラの果実が熟す秋から冬にかけてです。アムラの果実の栄養成分は乾燥させても低下しにくいことから、乾燥果実がインドでは流通しており、年間を通して食べることができます。

●アムラの特徴
アーユルヴェーダでは、食べ物の味を6種類(甘味・苦味・酸味・塩味・渋味・辛味)に分けますが、アムラはそのうち「塩味」以外の5種類の味を持っている唯一の食べ物とされています。これは、多岐にわたって有効成分を持っているということですが、その中でも、ポリフェノールビタミンC、さらに食物繊維であるペクチンを豊富に含みます。
その他にも私たちの体に必要不可欠なミネラルであるなど様々な成分を含んでいます。

・ポリフェノール
アムラには、β-グルカゴリンをはじめとするポリフェノールが100g中に3000mg以上も含まれています。

・ビタミンC
アムラのビタミンCは果実100g中に800mg以上含まれています。

・ペクチン
アムラには食物繊維の一種であるペクチンを豊富に含みます。
ペクチンとは、様々な野菜や果物に含まれ、植物の細胞壁を構成する多糖類の1つです。

[※1:アーユルヴェーダとは、インドで古くから語り継がれている東洋医学の1つです。「予防医学」の考え方を重視し、世界保健機構(WHO)が正式に奨励している医学です。]
[※2:アチャールとは、インドのピクルスのことです。スパイスや酢などで様々な野菜や果物を味付けしたもので、基本的には酸っぱいのですが、辛いものもあります。]
[※3:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]

アムラの効果

アムラには、β-グルカゴリンをはじめとするポリフェノールビタミンC、ペクチンなどを豊富に含んでおり、これらの成分には以下のような健康に対する効果が期待できます。

●アムラの抗酸化作用による効果
私たち人間は紫外線やストレス、タバコ、アルコールなど生活のあらゆるものが原因で体内のサビとなる活性酸素[※4]を発生させてしまいます。抗酸化作用とは、この活性酸素を除去し、体が酸化しないようにすることです。
例えば、くぎをそのまま空気中に放置しておくとサビつき、劣化してしまいます。これが酸化です。酸化は私たち人間の体の中でも起こっており、老化や病気の原因となってしまうのです。アムラに含まれるビタミンCやポリフェノールには、酸化を防ぐ強力な抗酸化作用があります。【2】【8】【12】【15】

●糖尿病や高血圧を予防する効果
アムラに含まれるポリフェノールの一種β‐グルカゴリンには、消化酵素であるアミラーゼ[※5]の働きを抑制する働きがあります。それにより、血液中の血糖の上昇を防いだり、血圧の降下を促す作用もあります。
また、食物繊維の一種であるペクチンにも血糖値の上昇を抑える働きがあります。【5】【13】

コレステロール値を下げる効果
アムラに含まれるβ‐グルカゴリンには、胆汁酸[※6]の排泄を促進し、コレステロールや中性脂肪の上昇を抑える作用があります。体に良い作用を持つ善玉(HDL)コレステロールは増加させ、悪玉(LDL)コレステロールは減少させる働きがあると確認されています。
また、ペクチンにもコレステロール低下作用があり、強い粘性でコレステロールや胆汁酸、有害物質をくっつけて糞便として排泄させます。【1】【14】

●美肌効果
アムラの持つポリフェノールビタミンCには、肌や筋肉、骨に欠かせない細胞結合組織であるコラーゲンの生成を促進させる働きがあります。
コラーゲンの分解酵素であるコラゲナーゼの働きを阻害し、コラーゲンの衰えを抑えてくれるので美容効果抜群です。

●便秘を改善する効果
ペクチンには、腸内醗酵により腸内を酸性に保ち、腸内環境を整える働きがあります。その働きによって、便秘を解消する作用があります。

●感染症を予防する効果
免疫力を高めて、風邪などの感染症を予防し、回復を早めることで知られています。
ビタミンCは、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する白血球に多く含まれています。感染症にかかると、白血球の中のビタミンCが減ってしまうことから、ビタミンCには白血球の力を高める作用があると考えられます。【3】【19】

●貧血を予防する効果
ビタミンCには、食べ物に含まれる非ヘム鉄を体内で体に吸収されやすい鉄に変える働きがあります。鉄が吸収しやすくなるので鉄不足から起こる鉄欠乏性貧血の予防や改善につながります。

●ストレスへの抵抗力を高める効果
ストレスを和らげるホルモンである副腎皮質ホルモンの生成やドーパミンなどの神経伝達物質の生成に働きかけ、精神的なストレスへの抵抗力を強化します。

●白髪や脱毛を予防する効果
アムラのポリフェノールの効果により、脱毛や白髪を防ぐことができると言われています。
頭皮にある毛根は皮脂線があり、油脂が発生しやすく、つまりやすい場所です。その油脂が頭皮の血液のめぐりを悪化させたり、活性酸素を発生させることが、脱毛や白髪につながります。
アムラのポリフェノールは、頭皮の血液のめぐりをスムーズにし、毛根の油脂に発生する活性酸素を効率よく除去する抗酸化作用があります。
さらに、アムラ含まれる豊富なビタミンCにより、頭皮の血管を強化します。

これらの他にも、胃液の分泌を促進させる作用や肝機能障害を改善する作用があることもわかっています。

[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応力が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質たんぱく質DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※5:アミラーゼとは、膵液や唾液に含まれる消化酵素の一種です。糖質を分解し吸収されやすくします。]
[※6:胆汁酸は、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]

アムラは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○糖尿病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○美肌を目指したい方
○腸内環境を整えたい方
○免疫力を向上させたい方
○貧血でお悩みの方
○ストレスをやわらげたい方
○白髪・脱毛を予防したい方
○肝臓の健康を保ちたい方

アムラの研究情報

【1】卵巣摘出により脂質代謝異常を起こしたラットに、フルクトースが豊富な食事とアムラを与えた結果、HDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロール、トリグリセリドを減少させたことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22692334

【2】試験管内の実験系(in vitro)において、インド薬草(ミロバラン、Terminalia belerica、アムラ、エビスグサ)の抗酸化活性について調べました。スーパーオキシド、一酸化窒素、ペルオキシ亜硝酸、次亜塩素酸、一重項酸素などを測定した結果、インド薬草の抽出物は酸化ストレスに対して有効であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22624183

【3】アムラの免疫促進作用について、14日間にかけて、0、50、100、200 mg/kgをマウスに投与させ、アムラの経口投与後、マウスから分離した脾細胞がアムラ用量依存的に増殖活性を示しました。また、アムラを100mg/kg投与させたものではナチュラルキラー細胞活性の向上が示されました。このことから、アムラはマウス免疫刺激作用を及ぼすということがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22574533

【4】アムラから抽出されたβ-グルコガリンが、アルドース還元酵素(ALR2)を抑制することにより糖尿病に誘発される白内障を抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22485126

【5】高血糖は、前糖尿病および糖尿病に関連する病理学的状態です。近年の研究により、アムラのサプリメントの摂取は、空腹時血糖および糖尿病の指標であるHbA1c濃度を下げることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22329631

【6】アムラ水溶性抽出物を14日間投与させることによって、マウス強制水泳においてその無動時間を有意に減少させました。今回の研究から、アムラの投与は抗うつ薬の様に作用し得る可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22070517

【7】ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットに対して、8週間アムラ果汁を投与した結果、グルコースの血漿中の濃度が低下しました。また抗酸化酵素(SOD、グルタチオン、カタラーゼ)の活性を増強させ、乳酸脱水素酵素やクレアチニンキナーゼの働きを改善することで、心筋肥大や心筋症を改善したことがわかりました。このことから、アムラ果汁においては、Ⅰ型糖尿病に伴う心筋障害に対する作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22065939

【8】アムラのイソプロテレノール誘発心毒性に対する作用について調べました。30日間にわたって、アムラをイソプロテレノールによって誘発心毒性を誘発させたラットに投与しました。アムラ投与ラットは脂質過酸化の抗酸化、筋細胞損傷の特定マーカーを有意に抑制しました。このことから、アムラによる心保護作用はアムラの抗酸化能による可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22033422

【9】アルコールにより肝臓を傷害させたマウスに対し、アムラ250mg/kgを投与した結果、脂質過酸化、カルボニルタンパク質の減少、抗酸化酵素活性の回復が認められました。このことから、アムラはアルコールによる肝障害を抑える働きが示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2994578/

【10】N-ニトロソジエチルアミンはマウス肝細胞でのマンガンSOD(MnSOD)、カタラーゼを減少させ、iNOS(一酸化窒素産生酵素)の活性を上昇させました。100mg/kgのアムラを投与することで、MnSOD、カタラーゼを上昇させ、iNOSならびにアルコールによって誘発されるCYP2E1酵素の発現を低下させました。このことからアムラの摂取によってN-ニトロソジエチルアミン誘発肝障害を抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21761987

【11】アムラの抽出物をラットの腹腔内に投与することで、カイニン酸誘発てんかんに伴う酸化ストレス物質や炎症性物質を抑制することがわかりました。このことから、アムラの飲用はてんかんによる認知機能低下および脳内の酸化ストレス物質上昇を改善することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21749189

【12】除核ラット水晶体に対し、アムラ、ミロバランおよびTerminalia belericaからなる3成分抽出物を投与した結果、グルタチオンの減少を抑制し、また脂質過酸化生成物の発生を抑制しました。このことから、アムラはその抗酸化作用により、白内障を予防する可能性があると考えられました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3117320/

【13】糖尿病尿毒症患者に3ヶ月間、エピガロカテキン-3-ガレートとアムラの混合物を経口投与させた結果、防御作用が認められました。このことから、エピガロカテキン-3-ガレートとアムラの1:1の配合は、糖尿病尿毒症に対して有効である可能性がわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21631363

【14】健常者および2型糖尿病患者に対してアムラ果実粉末を飲用させた結果、食後グルコースの血中レベルが有意に減少しました。また、コレステロールおよびLDLコレステロールが減少しました。このことからアムラは糖尿病を予防することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21495900

【15】アルコールによって脳内ミトコンドリア機能不全を起こしたラットに対してアムラを投与しました。その結果、アルコールによって増加した脳内の一酸化窒素、チオバルビツール酸、シトクロム、脂質過酸化を減少し、抗酸化酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドデヒドロゲナーゼ(NADHD)などの活性の回復が認められました。このことによりアムラは、抗酸化能のレベルを上昇させ、ミトコンドリアの機能不全を改善する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21138366

【16】Lアルギニン誘発急性すい炎を発症したラットにアムラを投与した結果、アムラ投与群は、対照群と比較してリパーゼとインターロイキン10の値が低いことがわかりました。また、アムラ投与群は膵臓内の核酸含有量、DNA合成、すい臓のたんぱく質およびすい臓アミラーゼ含有量が向上したことがわかりました。このことからアムラの摂取は、すい臓を膵炎から保護する働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21138365

【17】ヒト皮膚線維芽細胞をUVBによって傷害させ、アムラ抽出物を添加した結果、コラーゲン分解能を持つMMP‐1の活性を抑制してコラーゲンを保護し、細胞増殖能を高めることがわかりました。このことから、アムラは活性酸素種(ROS)を抑制することが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20795364

【18】アムラ抽出エキスのアルカロイドは、グラム陽性、陰性の病原菌に対して細胞毒性を有し、抗菌活性を有し、
ました。このことからアルカノイド含有のアムラ果汁は生物学的な活性があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19899327

【19】肺炎桿菌誘発のマウスに対してアムラを投与した結果、肺内の細菌の増殖を抑制しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19001683

【20】関節リウマチや骨形成に破骨細胞が関連しています。アムラ抽出物の投与によって破骨細胞のアポトーシス経路が活性され、関節破壊に伴う関節リウマチおよび骨粗しょう症を抑えることがわかりました。このことからアムラの投与は、骨粗しょう症の治療法になり得る可能性が示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2587459/

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参考文献

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