アマチャヅルとは?
●基本情報
アマチャヅルとは、日本全国に自生するウリ科に属する多年生[※1]のツル性植物で、朝鮮半島や中国、インド、マレーシアなどに広く分布しています。アマチャヅルは雌雄異株(しゆういしゅ)[※2]で、茎は他の植物などに絡み付くようにして成長し、茎の長さは約5mにもなります。葉は互生し、通常は5枚の小葉からなり、夏から初秋にかけて円錐状の黄緑色の小花を多数つけます。果実は直径6~8㎜の球形の液果で、熟すと黒緑色になります。
アマチャヅルの葉の部分は薬用として使用し、天日干しした葉を刻んでお茶として古くから利用されてきました。アマチャヅルの名前の由来は、全草にアマチャ(甘茶)[※3]のような甘みがあることからこの名が付けられました。お茶にするとほんのり甘みがあり、飲みやすいのが特徴です。
●アマチャヅルの歴史
アマチャヅルは生薬としても古くから使われていました。中国では絞股藍(こうこらん)と呼ばれ、生薬名を七葉胆(しちようたん)として、明時代に気管支炎、肝炎、消化性潰瘍などの民間治療薬として利用されていたようです。当時の「中国漢方」という書物に、薬用としての利用が記載されていました。
日本においても、アマチャヅルの甘味成分に関する研究が進められ、アマチャヅルの葉や茎には薬用人参と同様の有効成分であるサポニンが70種類以上含まれていることが1977年に行われた研究発表により明らかになりました。
●アマチャヅルの成分
アマチャヅルの中には、サポニンという成分が多く含まれています。
サポニンとは、植物の根や葉、茎などに広く含まれている配糖体[※4]の一種で、水や油に溶けて泡立つ特性を持っており、渋みや苦味となる成分です。
サポニンには神経の興奮やストレスを鎮める効果があり、特にストレスが原因の胃痛や胃潰瘍をはじめ、ガン、動脈硬化、高血圧、糖尿病などに対しての予防効果が確認されています。さらに肝臓や肺、子宮ガンの予防、老人性慢性気管支炎の改善、十二指腸潰瘍の予防、神経痛の予防、老化の防止、また生活習慣病の予防などに効果を発揮するといわれています。
また、アマチャヅルには、コレステロール値を下げる効果や血管拡張作用などがあり、高血圧の予防、老化防止などのアンチエイジング効果やダイエット効果が期待できる成分でもあります。アマチャヅルに含まれるジンセノサイドというサポニンは、薬用人参とほとんど変わらない成分であることから、アマチャヅルの健康効果が注目されています。サポニン以外にも、ゲルマニウム[※5]やステロール[※6]、フラボノイドなども有効成分として含まれています。
<豆知識>手軽に楽しめるアマチャヅル茶
アマチャヅルは、手軽に栽培できるため、成長した葉を刻んで天日干しにするだけで簡単にアマチャヅル茶をつくることができます。種類によって甘い葉と苦い葉があり、苦い葉の方がサポニンを多く含んでいます。ほのかな甘みのある飲みやすいお茶ですが、苦い葉もありますので、濃さを調節する必要があります。
水1リットルに対してアマチャヅル茶葉大さじ1~2杯をやかんに入れ、火にかけます。沸騰したら弱火で7、8分煮詰めると出来上がります。急須の場合は、アマチャヅル茶葉大さじ1~2杯に熱湯を注ぎ、好みの濃さで味わうのがおすすめです。
●アマチャヅルを摂取する際の注意点
アマチャヅルを短期間で経口摂取する場合、適量であれば基本的には安全性の高いハーブです。しかし、人によっては、重篤な吐き気を引き起こし、腸運動が激しくなることで下痢などになる可能性があるとされています。また、妊娠中・授乳中の方や糖尿病患者の使用に対しても危険性が指摘されているため、摂取においては注意が必要です。アマチャヅルと医薬品等との相互作用は、理論的にはあるとされており、投薬治療を受けている方の摂取に当たっては、医師への相談が推奨されています。
さらに粉末のアマチャヅルは、アレルギーを発症させる恐れがあるという報告もされているため、利用する際には十分に気を付ける必要があります。アレルギーを引き起こした場合、倦怠感や発熱、発疹、手足の痛みなどを発症する可能性があります。
[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:雌雄異株とは、植物の種で雌花をつける株と雄花をつける株の区別がある植物のことです。]
[※3:アマチャ(甘茶)とは、ユキノシタ科の落葉低木のことです。また、干したアマチャの葉を煎じた甘みのあるお茶のことでもあります。]
[※4:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し,植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※5:ゲルマニウムとは、32番目の元素Geです。ゲルマニウムには有機と無機があり、アマチャヅルに含まれているものは有機ゲルマニウムです。人体には、けがや病気を治そうとする自然治癒力があるとされ、ゲルマニウム成分にはその自然治癒力の働きを助ける力があり、様々な生理活性作用が期待されています。]
[※6:ステロールとは、植物由来の有効成分です。動物性食品に含まれるコレステロールによく似た化学構造をしており、健康維持に効果的な働きを持っています。]
アマチャヅルの効果
●ストレスをやわらげる効果
アマチャヅルに多く含まれるサポニンには神経的興奮を鎮める作用があり、イライラ・むかつき・肩こりなどの精神的・肉体的ストレスの緩和に効果があります。これにより、ストレスやそれに伴う胃痛、胃潰瘍の予防にも効果があります。サポニンの働きにより神経の興奮状態が鎮められ、頭痛・肩こり・腰痛・ストレス・花粉症などの改善や疲労回復効果も期待できます。
●生活習慣病を予防する効果
サポニンには、肝機能を改善し、善玉(HDL)コレステロールを増加させて、悪玉(LDL)コレステロールを減少させる働きがあります。また、アマチャヅルに含まれるステロールにも血中コレステロール値を低下させる働きが期待されています。
アマチャヅルは、ジンセノサイド、プロトパナキサジオール、ギペノサイドと呼ばれるサポニンを含んでいるため、循環器系機能向上、鎮痙、肝機能強化、抗アレルギー、血糖値降下、鎮静、免疫機構・神経系統の強化、血圧降下、コレステロール値降下などの作用が期待されています。血圧をコントロールして消化器系や免疫系の働きを助けることで、人体を健康に保つ働きがあります。
また、アマチャヅルに含まれるフラボノイドは、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防いで動脈硬化を予防したり、血が固まりドロドロになるのを防ぐ働きなど、生活習慣病の予防に効果を発揮します。また、毛細血管を強くして、高血圧を防ぐ働きも期待されています。
サポニンの薬理効果については、高脂血症[※6]がアマチャヅルサポニンの投与によって予防できることが動物実験で明らかになっています。さらに血小板凝集物質であるトロンボキサンA2の生成を抑制するなどの報告があります。【2】【4】【5】【6】
●アンチエイジング効果
アマチャヅルに含まれるサポニンの働きによって、老化を予防する働きが期待されています。サポニンは新陳代謝を活発にして、体内にある様々な器官のもととなっている細胞を若返らせる働きがあるとされ、老化防止や若返りといった効果に期待できます。
●その他のアマチャヅルの効果
民間療法では、乾燥した全草を煎じてお茶にし、咳止めや喘息、花粉症などの症状に用いています。また、利尿作用があるともいわれています。
[※6:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態のことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]
食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○ストレスをやわらげたい方
○肩こり・腰痛をやわらげたい方
○いつまでも若々しくいたい方
○胃・肝臓の健康を保ちたい方
○生活習慣病を予防したい方
アマチャヅルの研究情報
【1】下痢の症状を引き起こすアフラトキシン、フモニシンを出す細菌に対しアマチャヅルの抗菌作用について調べました。アマチャヅルを5つの抽出物に分け、それぞれ抽出物A、B、C、D、Eとしました。抽出物A、B、CはDおよびEよりも抗菌活性が強く、グラム陰性菌の最小発育阻止濃度(MIC)は、0.98 ~31.25 mg/㎖で、グラム陽性菌のMICは、3.9~15.62 mg/㎖でした。このことからアマチャヅルは、非常に強い抗菌活性を有していると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21706950
【2】24名のⅡ型糖尿病患者にアマチャヅル6gを12週間摂取させ、その効果について調べました。12週間後、対照群と比較してアマチャヅル投与群は血中グルコース濃度が3mM低下しました。またHbA1cもアマチャヅル投与群は2%低下しました。これらのことから、アマチャヅルの摂取は、Ⅱ型糖尿病患者に対して有効である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20213586
【3】アマチャヅルハーブティ(PSGP)から水溶性ポリサッカリドを熱水抽出およびエタノール沈殿によって分離しました。PSGPは、マクロファージからの活性酸素や腫瘍壊死因子TNFαの遊離を促進させることがわかりました。これらのことから、アマチャヅルは免疫調整に重要な役割があることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18636735
【4】4ヵ月間、80㎖のアマチャヅルと基本的な食事を摂取し、肝臓の生化学データをとりました。6ヵ月後、アマチャヅル摂取群はBMI、肝機能マーカーのAST、ALT、インシュリン抵抗性が低下していました。このことから、アマチャヅル摂取は、非アルコール性脂肪肝疾患患者の食事療法への有効な補助療法になると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16708768
【5】肝X受容体(LXR)は、組織中のコレステロール濃度の調節センサーとして機能します。アマチャヅル抽出物は選択的にマクロファージ中のABCA1(HDLコレステロール形成に必要な蛋白質のひとつ)およびLXRの活性化・タンパク質発現を促進しました。このことから、アマチャヅル抽出物はアテローム性動脈硬化症の治療にとって製薬用薬剤の開発についての洞察を与えてくれる可能性が考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16154115
【6】in vitroで、アマチャヅルの水抽出の抗血栓作用を観察するために、ヒト血液試料を調べました。アマチャヅルはADP誘発性凝固作用に対して優位にその凝集作用を低下させたことがわかりました。いくつかの凝固因子を阻害することが分かりました。このことからアマチャヅルは、血栓抑制作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8219678
参考文献
・大森正司監修 日本茶紅茶中国茶健康茶 日本文芸社
・ハーブスパイス館 小学館
・Srichana D, Taengtip R, Kondo S. (2011) “Antimicrobial activity of Gynostemma pentaphyllum extracts against fungi producing aflatoxin and fumonisin and bacteria causing diarrheal disease.” Southeast Asian J Trop Med Public Health.2011 May;42(3):704-10.
・Huyen VT, Phan DV, Thang P, Hoa NK, Ostenson CG. (2010) “Antidiabetic effect of Gynostemma pentaphyllum tea in randomly assigned type 2 diabetic patients.” Horm Metab Res. 2010 May;42(5):353-7. Epub 2010 Mar 8.
・Yang X, Zhao Y, Yang Y, Ruan Y. (2008) “Isolation and characterization of immunostimulatory polysaccharide from an herb tea, Gynostemma pentaphyllum Makino.” J Agric Food Chem. 2008 Aug 27;56(16):6905-9. Epub 2008 Jul 18.
・Chou SC, Chen KW, Hwang JS, Lu WT, Chu YY, Lin JD, Chang HJ, See LC. (2006) “The add-on effects of Gynostemma pentaphyllum on nonalcoholic fatty liver disease.” Altern Ther Health Med. 2006 May-Jun;12(3):34-9.
・Huang TH, Razmovski-Naumovski V, Salam NK, Duke RK, Tran VH, Duke CC, Roufogalis BD. (2005) “A novel LXR-alpha activator identified from the natural product Gynostemma pentaphyllum.” Biochem Pharmacol. 2005 Nov 1;70(9):1298-308.
・Tan H, Liu ZL, Liu MJ. (1993) “[Antithrombotic effect of Gynostemma pentaphyllum].” Zhongguo Zhong Xi Yi Jie He Za Zhi. 1993 May;13(5):278-80, 261.
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・藤田紘一郎監修 知識ゼロからの健康茶入門 幻冬舎