ALA(アミノレブリン酸)とは
●基本情報
ALAとはアミノ酸の一種で、5-Amino Levulinic Acid(5‐アミノレブリン酸)の略称です。他にγ-レブリン酸ともよばれます。約36億年前、地球上に生命が誕生した時にも存在していたとされ、生命の根源物質であるともいわれています。
ALAは人間をはじめとする動物や植物など、多くの生物に存在して生重要な役割を担っています。
ALAは植物のもつ色素である葉緑素(クロロフィル)をつくる上で必要な成分で、人間をはじめとする動物では、赤血球のヘモグロビン[※1]の生合成に必要とされる原料です。ALAは植物に与えると、ストレスに強く味の良い野菜や果物作りができるといわれ、園芸用の肥料にも利用されます。
ALAはクロロフィル、ヘム、ビタミンB12等の多様な物質に生体内で変換されます。また、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアでのエネルギーづくりを支える働きがあります。ミトコンドリアの中でALAかつくられるプロトポルフィリンは鉄と結合し、ヘム[※2]をつくります。ヘムはミトコンドリアのエネルギー生産の過程において必要不可欠な存在です。ALAがなければ、このヘムをつくることができず、ミトコンドリアが効率的にエネルギーをつくりだせなくなることからもALAの生体機能上の重要度がうかがえます。
ALAはミトコンドリア内でのエネルギー代謝を活発にし、全身の代謝[※3]を活発にする働きが期待されています。
●ALAの歴史
ALAは1980年代にRebeizらによって、高濃度で用いると除草剤として利用できる天然の物質であると報告され、注目を浴びるようになりました。他の除草剤は毒性が強いことに対して、ALAは土壌に残留せず、安全で地球にも優しいと重宝されたとのことです。ALAはいくつかの化学合成法によって作ることができますが、そのどれもが収量が低く、生産性が低いとのことで高価でなかなか手に入らない原料として考えられていました。
近年新たな培養法が確立され、ALAの大量生産が可能となりサプリメントや化粧品などの様々な分野への応用が可能となりました。
<豆知識>生活で気を付けたいこと
体のエネルギーをつくるミトコンドリアは、過労やストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙、運動不足、不規則で偏りのある食生活などによりダメージを受けることが知られています。体内で作られるALAの量は、年齢とともに低下していくとされ、年齢に応じた十分なALAが供給されないと、ミトコンドリアのエネルギー生産能力が低下し、体温の低下や疲れ、老化を感じる原因のひとつになると考えられています。 規則正しい健康的な生活の維持が、大切だと考えられます。
[※1:ヘモグロビンとは、全身の細胞に酸素を運ぶ役割をしている赤血球の中にあるたんぱく質のことです。]
[※2:ヘムとは、ヘモグロビンの色素部分に相当する物質のことです。ポルフィリンと呼ばれる物質と鉄イオンの化合物です。]
[※3:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
ALA(アミノレブリン酸)の効果
●糖尿病を予防する効果
現在は糖尿病ではなく、将来糖尿病になるリスクのある糖尿病予備軍の人々を対象に行った実験では、ALAを摂取した被験者において、食事の2時間後にプラセボ群と比較して血糖値の低下が見られました。これらの結果から、研究者の間では5-ALAの摂取が境界型糖尿病の人々に有用である可能性を指摘しています。【1】
●肥満を予防する効果
ALAは、生体のエネルギー工場であるミトコンドリア内でのエネルギーづくりをサポートしています。
動物(ラット)による試験で、ALAを食べさせることによって内臓脂肪の量が減少し、さらに脂肪の蓄積を抑えるということが分かりました。これは、代謝が良くなることで食べたものや体に溜まっていた脂肪が、効率よくエネルギー(熱)に変換されたためであると考えられます。
また、代謝が良くなることで体を温める働きがあります。体を温めることにより、免疫力の向上や疲労の改善などの効果が期待できます。高齢のマウスにALAを与えると免疫機能が向上し、さらに造血機能も上がったことが分かっています。
●美肌効果
ALAは化粧品にも配合されています。ALAは水分や油分を保つ保湿効果が期待されており、肌の水分量や弾力がアップするとされています。
ALA(アミノレブリン酸)は食事やサプリメントで摂取できます
ALA(アミノレブリン酸)を多く含む食品
○赤ワイン
○お酢
○お茶
○かいわれ大根
こんな方におすすめ
○糖尿病を予防したい方
○スリムな体型を目指したい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
ALA(アミノレブリン酸)の研究情報
【1】糖尿病予備群患者154名を対象に、5-ALAを12週間飲用したところ、プラセボ群と比較してグルコース負荷試験において有意に血糖値が低下していたことから、ALAは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22883608
参考文献
・田中亨 光合成細菌変異株を用いたレブリン酸濃度、pHの最適化、および酸化還元電位の制御による5-アミノレブリン酸の大量生産 生化学工学会誌
・5-アミノレブリン酸 BIO INDUSTRY vol.27 No.6 2010
・上代淑人 翻訳 イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版 丸善株式会社