アカショウマ

赤升麻 紅ショウマ トリアシショウマ
Astilbe thunbergii

アカショウマとは、ユキノシタ科チダケサシ属に属する多年草の植物です。根から抽出したエキスには、すでに体内に蓄積している脂肪を分解する働きと、これから摂取する食事中の脂肪の吸収を抑える働きの2つの作用を持ちます。

アカショウマとは

●基本情報
アカショウマとは、ユキノシタ科チダケサシ属に属する多年草[※1]の日本固有の植物です。アカショウマは漢字で「赤升麻」と書き、学名をAstilbe thunbergiiといい、英名はありません。生薬[※2]で用いられるキンポウゲ科の升麻(しょうま)に見た目が似ており、なおかつ根茎が赤いことから「アカショウマ」と名付けられました。また別名を「紅ショウマ」ともいい、根茎が鳥の足に似ていることから「トリアシショウマ」とも呼ばれています。生薬であるショウマの代替品として、民間療法で用いられていたといわれています。
アカショウマは東北地方南部から近畿地方にかけて広く分布しており、落葉広葉樹林の林縁などに生育しています。根は太く赤色をしており、株を形成して生育し、6月~7月に白い花を咲かせます。

<豆知識>アカショウマとショウマの違い
アカショウマは生薬であるショウマの代替品として、民間療法で用いられていました。
ショウマとは、キンポウゲ科の植物で、日本や中国北部などに分布しています。発汗作用や解熱作用、解毒作用、抗炎症作用を持ち、漢方薬としてはのどの痛みや口内炎などに用いられてきました。また、冷えなどにも効果的とされています。
一方、アカショウマは脂肪の吸収抑制、燃焼促進など、ダイエットに効果的な成分を含む植物です。
全く違う働きをするこれらの植物ですが、見た目に大きな差がないため、代替品として利用されていたようです。

●アカショウマに含まれる成分と性質
アカショウマは、一般的に根から抽出したエキスがダイエットなどに用いられます。
アカショウマに含まれる主な有効成分としては、イソクマリン系のベルゲニン、フラボノイドのアスチルビンなどがあります。
ベルゲニンは、胃酸の分泌を抑制したり、潰瘍を予防する作用などがあるため、胃腸薬などに用いられています。アスチルビンはフラボノイドの一種であるため、抗酸化作用を持ち、肝臓の保護作用を持つ成分です。また、両成分ともにノルアドレナリン[※3]の働きをサポートする作用があります。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:生薬とは、天然に存在する薬効を持つ産物から、有効成分を精製することなく体質の改善を目的として用いる薬の総称です。]
[※3:ノルアドレナリンはノルエピネフリンとも呼ばれ、交感神経末端や中枢神経などに広く分布する神経伝達物質の一種です。怒りに関係する興奮物質であると考えられています。]

アカショウマの効果

●脂肪の吸収を抑える効果
アカショウマには、脂肪の吸収を抑える効果があります。
脂質は、腸管で膵リパーゼ[※4]という酵素の働きによって分解され、体内に吸収されます。アカショウマは膵リパーゼの活性を阻害する働きがあるため、脂肪の吸収を抑える働きがあるといえます。
腸管での脂質吸収に及ぼすアカショウマエキスの影響について調べた研究では、アカショウマエキスを与えたラットに脂質を経口投与し、血漿中の中性脂肪量を測定したところ、中性脂肪量の上昇は認められず、脂質投与前と同じ水準を保ったという結果が出ています。
このことからも、アカショウマエキスには、腸管からの脂肪の吸収を抑える効果があるため、食事中の脂質の吸収を抑制できると期待できます。【1】

●脂肪の燃焼を促す効果
アカショウマには、体内に蓄積された脂肪の燃焼を促す効果があります。
過剰に摂取しすぎた脂質は、体内の脂肪細胞にため込まれ脂肪滴となり、肥大化することで肥満となります。この脂肪細胞にため込まれた脂肪を燃焼するには、ホルモン感受性リパーゼを活性化させる必要があります。
ホルモン感受性リパーゼとは、脂肪を脂肪酸[※5]とグリセロールに分解する酵素のことで、脂肪を分解することで脂肪吸収を促進する膵リパーゼとは働きが異なります。
ホルモン感受性リパーゼは、ノルアドレナリンなどのホルモン刺激によって活性化され体内の脂肪分解を促すことが明らかとなっています。
アカショウマに含まれるベルゲニンは、ノルアドレナリンの働きを助ける役割があるため、脂肪の燃焼を促す効果があるといえます。
また、運動前にアカショウマを摂取することで、運動中のエネルギー消費量が増加するとも考えられています。【2】

[※4:膵リパーゼとは、膵臓から分泌される酵素で、脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解し、体内への吸収を促進します。]
[※5:脂肪酸とは、炭素、水素、酸素から成る油脂や蝋(ろう)、脂質などの構成成分です。脂肪酸とグリセリンが結び付いて脂質が構成されます。]

アカショウマは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○肥満を防ぎたい方
○スリムな体型を目指したい方

アカショウマの研究情報

【1】高脂肪食ラットに対して、アカショウマ抽出物を摂取させたところ、血漿中のトリアシルグリセロールの上昇の抑制が認められ、同様にヒト試験でもトリアシルグリセロール、キロミクロンの抑制が認められました。アカショウマ抽出物は膵細胞のリパーゼ活性を抑制するはたらきをもつことから、アカショウマは抗肥満作用を持つと期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008729780

【2】アカショウマ茎抽出物にはノルエピネフリン誘発性脂肪分解促進成分として、①eucryphin、②bergenin、③astilbin が含まれており、アカショウマは脂肪分解効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9722485

【3】アカショウマ茎から抽出した成分をやけどマウスの皮膚に塗布したところ、各成分ともやけどが改善されたことから、アカショウマに創傷改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16920297

参考文献

・韓 立坤、三浦 尚子、河野 志穂、高下 崇、野宮 由起子、木村 善行、鈴木 公、奥田 拓道 (2006) “Effects of Astilbe thunbergii Rhizomes Extract on the Postprandial Blood Triacylglycerol Elevation” 生薬學雜誌 60(2), 68-72, 2006-08-20

・Han LK, Ninomiya H, Taniguchi M, Baba K, Kimura Y, Okuda H. (1998) “Norepinephrine-augmenting lipolytic effectors from Astilbe thunbergii rhizomes.

・Kimura Y, Sumiyoshi M, Sakanaka M. (2007) “Effects of Astilbe thunbergii rhizomes on wound healing Part 1. Isolation of promotional effectors from Astilbe thunbergii rhizomes on burn wound healing.” J Ethnopharmacol. 2007 Jan 3;109(1):72-7. Epub 2006 Jul 11.

ページの先頭へ