アカメガシワ

Japanese mallotus
赤芽槲 赤芽柏
Mallotus japonicus

アカメガシワは、古くから生薬として用いられてきました。樹皮に含まれるベルゲニンには、胃潰瘍や胃酸過多、胃炎などに効果的であるといわれています。また、最近は過敏性腸症候群に対する研究もされており、注目をあつめている成分です。

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アカメガシワとは?

●基本情報
アカメガシワは、トウダイグサ科アカメガシワ属に属する、5〜10mほどの樹高である落葉高木です。
新芽が鮮紅色であること、そして葉が柏のように大きくなることから命名されたといわれています。
本来は熱帯系統の植物でしたが、落葉性を身につけることで温帯への進出を果たしたといわれています。
本州・四国・九州・東南アジアの山野に自生していますが、日本では二次林[※1]に多く見られます。
雌雄異株で空き地などによく生えてくる典型的な植物のひとつです。
春先の新芽と稚葉は、毛が密生しており鮮やかな紅色ですが、成長するにつれて緑色となり赤色を帯びた長い柄をもつようになります。初夏に白色の花を穂状につけ、秋に軟らかい針がついた果実が熟します。この実は秋に裂開し紫黒色の光沢のある種子を出します。
また、種子は高温にさらされると発芽しやすくなるという特徴があります。そのため、伐採や森林火災により森林が破壊されると急激に繁殖します。

●アカメガシワの歴史
アカメガシワは古くから生薬として、苦味健胃薬として用いられてきました。アカメガシワが医薬品の原料として配合された胃腸薬は45年以上販売されています。その後、平成13年度に行われた厚生労働省の食薬区分制度の改正に伴いアカメガシワの樹皮が食品に使用できるようになりました。

●アカメガシワに含まれる成分と性質
赤い芽や新葉を乾燥させて煎じた汁を飲むと胃ガンや胃潰瘍によく効くといわれ、生薬としても用いられています。
葉にはゲラニイン、マロツシン酸、マロチン酸、種子には強心配糖体のコロトキシゲニン、マロゲニン、コログラウシゲニン、およびパノゲニンなどの配糖体を含むことが知られています。
そのため、昔からアカメガシワの葉は主に腫れ物や痔などの治療薬として広く利用されていました。
また、アカメガシワの樹皮には、ポリフェノールの一種であるベルゲニン、ルチンタンニンが含まれており、胃酸過多、そして胃潰瘍の改善、胃液分泌の抑制、肝臓保護作用などが示されています。
さらに果皮には抗発ガンプロモーター[※2]作用、抗ウイルス作用、そして抗マクロファージ[※3]を持つ成分が含まれています。

[※1:二次林とは、原生林が何らかの原因で破壊されたあとに自然に再生した森林のことです。]
[※2:発ガンプロモーターとは、単独では発ガン性を示さないが、発ガンを促進させる作用を持つ物質のことです。]
[※3:マクロファージとは、白血球の一種です。免疫機能を担う細胞のひとつで、生体内に侵入したウイルスや細菌、または死んだ細胞を捕食し、消化する働きを持ちます。]

アカメガシワの効果

アカメガシワには、ベルゲニンやポリフェノール類を含むため、以下のような効果が期待できます。
●腸内環境を整える効果
アカメガシワの樹皮には、すぐれた整腸作用があることが報告されています。
また、近年患者数が増加している過敏性腸症候群に対しても有効であると注目されています。
過敏性腸症候群は、Irritable bowel syndrome(IBS)と呼ばれ、炎症や腫瘍などの基質的疾患が存在しないにもかかわらず、大腸を中心とした下部消化管の機能異常により腹痛、腹部膨満感などの慢性の腹部不快感、便秘・下痢などの便通異常をきたす症候群です。
特に消化器内科を受診する頻度の高い疾患のひとつで、消化器疾患患者の約半数を占めるといわれています。
アカメガシワに含まれるベルゲニンは腸の筋肉に直接作用し、ぜん動運動を正常な運動状態に近づけることで、腸の異常な運動による軟便や便秘などの便通異常を整えます。
さらに、アカメガシワには、ぜん動運動を整える作用に加え便秘傾向にある成人女性だけでなく下痢または便秘下痢交替症のある人の排便回数や排便量を整える作用がみとめられています。この便秘や下痢、または便秘下痢交替症のそれぞれを改善する作用は非常に注目すべき効果です。またアカメガシワ樹皮から抽出されたエキスには腸のぜん動運動を促す作用以外に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃腸疾患などにも効果的であるといわれています。【3】●胃炎や胃潰瘍を予防する効果
アカメガシワには、ベルゲニンやタンニン、フラボノイドなどの成分が含まれているため、胃腸の過度の緊張を抑えて胃粘膜を保護し、胃の炎症を鎮める働きがあるといわれています。【1】【2】
樹皮に含まれるベルゲニンには抗腫瘍作用をはじめ、プロスタグランジン[※4]産生の増加により胃粘膜を保護する効果があります。
ベルゲニンは、胃液分泌抑制作用が認められ、胃内酸度を正常にして消化機能を活性化する作用や、胃粘膜の抵抗力を高めることで胃潰瘍を予防する作用があるといわれています。[※4:プロスタグランジンとは、体内に細菌が侵入した時に、体内でつくられるホルモン様物質のことです。炎症、発熱を引き起こす原因といわれています。]

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○腸の不調を改善したい方
○胃の調子が気になる方
○胃潰瘍を予防したい方

アカメガシワの研究情報

【1】アカメガシワは、リポポリサッカライド誘発による炎症性サイトカインであるTNFαやインターロイキン6を抑制しました。アカメガシワは、マクロファージのNF-κBを抑制することにより、これらのサイトカインを抑制することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12595079

【2】マクロファージにリポポリサッカライド(LPS)およびアカメガシワを添加したところ、細胞内の一酸化窒素(NO)を抑制しました。また、アカメガシワはフロログリセノールによって誘発される炎症性サイトカインのプロスタグランジンE2、TNF-α、インターロイキン-6の発現を抑制しました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110001044742

【3】33名の健常女性に対し、アカメガシワカプセル300mg、550mg、そしてプラセボを2週間飲用させました。その結果、アカメガシワ300mgおよび550mgを含むカプセルを飲用した被験者は、摂取前よりも有意に排便回数および排便量が増加しました。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007367319

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・村上光太郎 食べる薬草事典-春夏秋冬・身近な草木75種 2010 農山漁村文化協会

・石井 里枝 (2003) “アカメガシワ果皮成分phloroglucinol誘導体のマクロファージ活性化抑制作用に関する研究” 日本大学薬学部研究紀要 42, 89-96, 2003-09-01

・大野 弘美、田村 幸一、寺尾 由香 [他]、阿武 尚彦 (2005) “アカメガシワエキスが便秘傾向にある成人女性の排便に及ぼす影響” 日本食品化学学会誌 12(2), 93-99, 2005-08-31

・中島 野枝 “赤芽柏(アカメガシワ)樹皮エキス含有飲料の整腸作用について” 食品と開発 VOL. 43 NO. 4

・Ishii R, Horie M, Saito K, Arisawa M, Kitanaka S. (2003) “Inhibition of lipopolysaccharide-induced pro-inflammatory cytokine expression via suppression of nuclear factor-kappaB activation by Mallotus japonicus phloroglucinol derivatives.” Biochim Biophys Acta. 2003 Mar 17;1620(1-3):108-18.

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