アサイーとは
●基本情報
アサイーとはワカバキャベツヤシといわれるヤシ科エウテルペ属の植物で、アマゾンの先住民が生き抜くために食用としてきた、紫色の果実です。「アサイーベリー」と呼ばれることもありますが、ベリーの仲間ではありません。
アサイーの木は、アマゾン地帯の水辺に生育し、1本の木からたくさんの幹が生えています。高さはおよそ25mにもなります。葉は黄緑色の短冊状で、長さは最大で2mにもなり、細長い幹から紫色の果実をつけた房が3~4房ほど垂れ下がります。1房あたりの果実の重さは3~6㎏にもなります。
果実は、直径1~1.2㎝ほどの球状もしくは楕円形で、植えてから2年程で実ります。
食用とされる果実の95%は硬い種で、食べられる部分はほんの5%ほどしかありません。そのわずか5%の部分に多くの栄養素を蓄えており、その優れた栄養価から「ミラクルフルーツ」「ブラジルの奇跡」「スーパーフルーツ」などとも呼ばれています。
また、アサイーには自然治癒力を高め、エネルギーを回復する効果もあるので、ブラジルやアメリカのスポーツ選手に好まれています。
日本で注目されるようになったのは、ある日本人のサッカー選手のエピソードがきっかけです。そのサッカー選手は貧血気味で悩んでおり、当時あまり日本で知られていなかったアサイーを貧血改善と練習後の疲労回復も兼ねて飲みはじめたところ、続けているうちに体調が改善されたそうです。この話をきっかけに、日本でもアサイーが知られることになりました。
アサイーは、ブルーベリーのような見た目をしていますが、甘味や酸味がほとんどなく、クセのない味です。
そのため、ブラジルではピューレ状にすりつぶした果肉を、砂糖とファリーニ(キャッサバ芋をフレーク状にしたもの)に混ぜて、主食として食べます。好みで干し肉や塩エビと一緒に食べます。
日本では、バナナやイチゴ、ヨーグルトなどの甘味や酸味が強いものと混ぜて食べることが多いですが、ブラジルなどでは、他のフルーツと混ぜて食べこるとはほとんどありません。
美容にも健康にも良いといわれているアサイーですが、加工されていない生の果実を手に入れることは難しいです。
その理由は、収穫して24時間以内に加工しないと酸化してしまうからです。酸化すると、アサイーの豊富な栄養素が損なわれてしまうので、かつては国外への輸出が困難でした。しかし、現在は加工技術や冷凍設備等が発達し、すりつぶしたアサイーの果実をパックにした製品や、果実のまま冷凍したものが輸出されるようになりました。
現在、日本では、パウダータイプや冷凍のピューレなどが販売されていますが、どちらでも簡単にジュースをつくることができます。
その日の気分によってアサイージュースをつくれば、飽きることなく続けることができます。
また、他国での栽培を防ぐため、アサイーの果実の大半を占めている種を取り除いてから輸出しています。種を食べることはできませんが、種からとれるオイルや種を煮出してつくるお茶は、民間療法として古くから使われていたといわれています。
●アサイーの原産地、生産地
アサイーは南アメリカ・ブラジルのアマゾン地帯で何百年も前から自生していました。従来は自生しているアサイーのみだったのですが、近年では、アグロフォレストリー[※1]によって、栽培する面積が増えてきました。
しかし、種の輸出が禁止されているため、ブラジル以外でのアサイーの生果実や種の販売はされていません。
●アサイーに含まれる成分と性質
赤道直下の強い紫外線と大量に降り続ける雨などの環境の中、アサイーは紫外線や活性酸素[※2]から実(身)を守るために、ポリフェノールをはじめとする抗酸化物質や鉄・食物繊維・カルシウムなどの栄養素をたっぷりと蓄えて育ちます。
また、アサイーにはエネルギー補給に必要なアミノ酸・オレイン酸・ビタミンB₁・ビタミンB₂も含まれています。
[※1:アグロフォレストリーとは、森林破壊をせず森をつくりながら作物を生産する農法のことです。樹木作物を中心に植栽し、樹間で動植物を育成する方法で、同じ土地で樹木やその他の農作物などを同時に育てる農法です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
アサイーの効果
●アンチエイジング効果
日常生活で避けることのできない紫外線やストレス・排気ガスや喫煙により、私たちの体には活性酸素がたくさん存在します。この活性酸素が体のさびつき、いわゆる老化や体の不調を引き起こす原因となっているのです。
アンチエイジングに効果がある有名な栄養素は、活性酸素を抑えてくれる働きを持つポリフェノールですが、アサイーには赤ワインやチョコレートとは比べものにならないほどのポリフェノールが含まれています。
赤ワインには100mℓ中に150~300mg、チョコレートには100g中に800mgのポリフェノールが含まれていますが、それに対してアサイーには、100g中に赤ワインの約30倍の4000~4500mgものポリフェノールが含まれています。しかも、抗酸化力を示すORAC値[※3]が非常に高く、強い抗酸化力を持っていることがわかります。
植物が動物より長生きなのは、このポリフェノールを自らの体に豊富に持っているためだといわれています。【2】【11】
●眼精疲労を改善する効果
アサイーには、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれています。特にシアニジン系のアントシアニンを多く含んでいます。シアニジンは吸収が早いのが特徴で、パソコンやテレビゲームなどによる眼精疲労の回復・軽減に効果があります。
●貧血を改善する効果
アサイーに豊富に含まれる鉄は、吸収率が8%前後と非常に低く、特に女性に不足しやすいミネラルです。50%の女性が鉄欠乏症の予備軍といわれています。鉄の欠乏により、食欲不振・便秘・下痢・免疫力の低下・慢性疲労などの症状が現れます。
また、アサイーには造血のビタミンといわれる葉酸が豊富に含まれています。その他にも、ビタミンCなど鉄の吸収を促進してくれる栄養素が含まれており、貧血でお悩みの方に適した果物です。
●骨粗しょう症を予防する効果
アサイーには、豊富なカルシウムが含まれているため、原産地であるブラジルでは「アマゾンのミルク」と呼ばれています。
カルシウムには、骨を丈夫にする、疲労を回復する、神経を正常に保つなどの働きがあります。
日常的にカルシウムが不足すると、骨粗しょう症や筋肉のけいれんの原因となってしまいます。しかし、日本人は慢性的なカルシウム不足で、先進国ではワースト1といわれています。
アサイーは、カルシウムの他にもビタミン類やホルモンを整えてくれる物質が含まれているため、骨粗しょう症の予防や筋肉のけいれんの予防にも適した食材です。スポーツ選手に愛される理由は、このような効用があるからです。
また、妊婦の方は特にカルシウムを摂る必要があります。日常的なカルシウム摂取により、高血圧や妊娠中に起こりやすい疾病のリスクが低下する効果があるといわれているためです。
●美肌効果
アサイーはモデルが美肌のために愛用している果物でもあります。その理由は、アサイーにはリノレン酸とオレイン酸という2種類のオメガ系必須脂肪酸[※4]を含んでいるためです。必須脂肪酸は、ホルモンの乱れを正常化してくれる働きや、ストレスに対抗する力があります。
また、豊富に含まれるポリフェノールにより、肌の老化・ダメージ予防にも効果を発揮します。その他にも、腸内をきれいにしてくれる食物繊維・美白効果があるビタミンC・肌の健康を保つビタミンB群も入っているので、肌荒れ予防に効果がある果物といえます。
●ホルモンバランスを整える効果
アサイーには、理想的な割合で2種類の必須脂肪酸が含まれています。この2種の必須脂肪酸により、体にとってなくてはならない機能をコントロールしてくれるプロスタグランジンというホルモンのような物質がつくられます。
この必須脂肪酸は、コレステロール値を低下する効果や血液をサラサラにする効果もあります。現代人は、ω(オメガ)3脂肪酸が不足している傾向があり、足りない脂肪酸を補うためにもアサイーを毎日摂ることが効果的といわれています。アサイーを毎日摂ることで、足りない脂肪酸を効果的に補うことができます。
●疲労回復効果
アサイーは豊富なアミノ酸・ビタミン・ミネラルを含んでいるため、疲労回復に最適な果物としてスポーツ選手に愛されてきました。
日本でアサイーが有名になるきっかけとなったサッカー選手も、貧血だけでなく疲労回復のスピードが速くなったといっていたそうです。
食欲がない時や体調を崩している時にもアサイーを摂ることが効果的です。
[※3:ORAC値とは、活性酸素吸収能力値のことです。米国農務省国立老化研究所で開発された、抗酸化力を示す値のことです。値が高い方が抗酸化力が強いとされています。]
[※4:オメガ系必須脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の一種で人体では生成できない脂肪酸のことです。]
こんな方におすすめ
○いつまでも若々しくいたい方
○美肌を目指したい方
○目の疲れが気になる方
○貧血でお悩みの方
○骨粗しょう症を予防したい方
○便秘でお悩みの方
○乳製品を摂取する機会が少ない方
○疲労を回復したい方
アサイーの研究情報
【1】アサイーベリーはLDLコレステロールの増加を抑制しました。
4週間アサイーベリーを摂ると、血中コレステロールとトリグリセリドを減少させ、脂肪肝の抑制に役立ちました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22751734
【2】SOD様酵素を作ることができなくなっているSOD1欠損動物に、アサイーベリー果実を摂らせると酸化ストレス物質や糖新生を抑制の上昇を抑制し、ミトコンドリア生合成機能[※5]の低下を抑制することで、老化のスピードを調節するはたらきがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22639178
【3】アサイーベリー果実を摂取すると、マウス脳細胞ミクログリア細胞での炎症による炎症関連酵素シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)や、発癌遺伝子p38、炎症関連物質TNF-α、NF-κBの増加を抑制しました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22224493
【4】アサイーベリーを摂った動物は、総コレステロール、非HDLコレステロール、およびトリグリセリドのレベルが低いものがあった。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22139433
【5】喫煙によって肺は傷害を受け、白血球のマクロファージや好中球、抗酸化酵素SOD、カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼ活性は低下するが、アサイーベリー抽出物を摂ることで、この低下を抑制する結果が得られた。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22138278
【6】アサイーベリーに含まれる有効成分「velutin」は炎症関連物質NF-κBを抑制することで、リポ多糖によって増加する炎症関連物質TNF-αやIL-6の増加を抑制し、抗炎症作用を示すことがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22137267
【7】糖尿病のラットでは、肝臓が傷害を受けて、酸化度合いの指標であるTBA(チオバルビツール酸)が上昇し、抗酸化酵素SODやグルタチオンペルオキシダーゼが低下しますが、アサイーベリーを摂ることにより、これらを緩和します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22128218
【8】赤ブドウやアサイーベリーのポリフェノールは、グルコースやリポ多糖によって体内に生じる炎症を緩和します。これは、アサイーベリーが炎症関連物質NF-κB のはたらきを抑えて、IL-6やIL-8の産生を抑制するはたらきによるものです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21682256
【9】アサイーベリーはIgEによるラット好塩基球の脱顆粒を抑制することにより、抗アレルギー作用を持つことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21486000
【10】大脳皮質や小脳、海馬への酸化ストレスは脳疾患の原因と言われています。アサイーベリーを摂ることにより、それぞれの酸化ストレスの度合いは軽減されました。
その軽減の度合いはアサイーベリーのポリフェノール量と相関していた点から、アサイーベリーが脳神経疾患の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19857073
【11】アサイーベリーから、有効成分としてポリフェノール成分、リグナン化合物の「aryltetrahydronaphthalene、dihydrobenzofuran、furofuran」が発見されました。
これらの成分は抗酸化作用が強く、アサイーベリーの健康効果に貢献している成分です。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18656934
【12】アサイーベリーの有効成分として、アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボノイドが多く含まれていました。アントシアニンは5種類で、シアニジン 3-グルコシドおよびシアニジン3-ルチノシドが主要成分で、他3種類のアントシアニンが微量で含まれていました。
アントシアニンの含有量は、3.1919 mg/g 乾燥重量(DW) でした。またプロアントシアニジンも含まれ12.89 mg/g が乾燥重量として測定された。
レスベラトロールも極めて微量ですが、含まれていることが確認できました。
その他、19種類のアミノ酸、植物ステロールとして、ステロールB -シトステロール、カンペステロールおよびsigmasterol が分析されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17061839
参考文献
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・Gary Young ND,Ronald Lawrence MD,PhD,Marc Schreuder Discovery of the ULTIMATE AUPERFOOD
・廣瀬雄治 パーフェクトフルーツ 奇跡のアサイーベリー KKロングセラーズ
・ダイヤモンド・ビジネス企画 編 The JEWEL FRUITS ダイヤモンド・ビジネス企画