ティートリー

Tea Tree Melaleuca alternifolia 
ペーパーバークトリー ティーツリー ティートゥリー

ティートリーは、オーストラリア原産の植物で、昔から先住民のアボリジニによって、感染症や傷などに対する万能薬として利用されてきました。現在、ティートリーは強い抗菌効果をもつことから、水虫やにきびの改善だけでなく、インフルエンザ対策としても注目されています。

ティートリーとは

●基本情報
ティートリーは、フトモモ科の常緑樹【※1】で、原産地はオーストラリアです。現在はオーストラリアだけでなくインドネシアにも自生しており、沼地や湖畔など湿り気のある土地で多くみられます。
ティートリーの名は、オーストラリア先住民のアボリジニが葉をお茶に用いていたことから呼ばれています。また、オーストラリアでは、ティートリーという名前ではなく、学名のメラレウカという名前で呼ばれることが多いです。俗称で、カヌカやマヌカといった植物もティートリーと呼ばれることがあります。
古くからアボリジニによって、ティートリーの抽出物が、感染症や傷などの症状に利用されてきました。主にティートリーは、その葉や小枝を水蒸気蒸留法【※2】で抽出して得られる精油【※3】として使われます。ティートリーの精油は、白から薄い黄色または黄緑色をしており、スッキリとしたクールな香りがします。まれに香水の原料として利用されることもあります。

●ティートリーの歴史
ティートリーは、18世紀にイギリスの探検家であるキャプテン・クックによって、初めて世界に紹介されました。1925年には、オーストラリアのベンフォールド博士によって、ティートリー精油の効果が国際的に発表されました。その後、強力な抗菌力をもつと同時に、肌に対する刺激も少ない天然の消毒薬として世界中に知られるようになりました。そのため第二次世界大戦中には抗菌剤、昆虫忌避剤としてオーストラリア兵の救急箱に常備薬として入れられていたといわれています。現在は、花粉症やインフルエンザ対策に役立つことで注目されています。

●ティートリーの利用
ティートリーは抗菌効果をもつため、クリームや石鹸など様々な製品に利用されています。また気管支系の痛みや炎症をやわらげるためにうがい薬として使用されたり、口腔内の感染症にはマウスウォッシュとして使用されたりもしています。抗菌力、殺菌力がとても強いため、たった一滴でも効果があるといわれています。そのため使用量を間違えると、肌が赤くなったり、ただれたりする恐れもあります。口から摂取する際には1、2滴ほど精油をたらす、または蒸気を鼻から吸うか、少量を皮膚に塗るという使い方をします。

●ティートリーの効果
ティートリーの主な成分は、テルピネン-4-オール、α-テルピネン、α-ピネンです。ティーとリーの香りは、心を癒し、リフレッシュさせてくれる効果があります。また以前からアロマテラピー【※4】としては、マッサージでストレスの減少に使われてきました。さらに近年は、ティートリーの精油が強力な抗菌作用があると注目されています。たくさんの種類がある中でも、オーストラリア産のティートリーは、高い抗菌作用があるといわれています。
ティートリーの抗菌作用は、その成分でもあるテルピネン-4-オールが関係しているといわれています。テルピネン-4-オール含量が高いティートリーの種は、治療に適しているため、テルピネン-4-オール含量が高いクローンが作られはじめています。

【※1:常緑樹とは、葉の寿命が1年以上あり年中葉をつけている樹木です。】
【※2:水蒸気蒸留法とは、水にほとんど溶けない物質に水を加えたり水蒸気を吹きこんだりして、水蒸気とともに物質中の揮発成分を蒸溜する方法です。植物の精油などの分離・精製に用いられます。】
【※3:精油とは、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した有効成分を高濃度に含有した100%天然の揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーに利用されています。】
【※4:アロマテラピーとは、花や木など植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を用いて、健康増進や美容に役立てていこうとする自然療法です。】

ティートリーの効果

●水虫を改善する効果
ティートリーは水虫を改善する効果があります。
10 % のティートリー精油を含有する軟膏を用いた水虫患者のグループでは、皮膚の表層の剥げ落ちや、炎症、痒みといった水虫の症状に対して、一般的な薬用軟膏と同じような効果がみられました。また爪の水虫患者にティートリー精油を塗布する実験を行ったところ、爪の外観や症状が改善する結果が得られました。このことから水虫に対してティートリーが効果をもたらすことが期待できます。【1】

●にきびを改善する効果
ティートリーはにきびを改善する効果があります。
にきびなどの皮膚トラブルで多くみられる原因菌に対して、ティートリーに含まれる成分であるテルピネン-4-オール、α-テルピネオール、α-ピネンが抗菌作用を示すという報告があります。さらに軽度から中度のにきび患者を対象に、5% のティートリー精油ジェルを患部に散布すると、にきびの数を減少させたという報告もあります。このことからにきびに対してティートリーが効果をもたらすことが期待できます。【2】

●インフルエンザを予防する効果
ティートリーの精油成分には抗ウイルス作用があります。
また2009年に発生した新型ウイルスであるH1N1に対してティートリーの精油が、ウイルスの増殖を大きく抑制するという報告があります。これには、ティートリーの成分であるテルピネン-4-オールが作用していることも明らかにされています。そのためインフルエンザの流行時期には、アロマポットを部屋に置いたり、コットンに数滴に含ませるだけで効果が期待できます。【3】

こんな方におすすめ

○水虫を改善したい方
○美肌を目指したい方
○風邪をひきやすい方

ティートリーの研究情報

【1】足白癬(水虫)患者104名を対象に、ティートリー精油ならびに抗真菌剤として使用されているトルナフテートとプラセボを塗布させてところ、スケーリング、炎症、かゆみ、熱傷のスコアにおいて、ティートリー精油はプラセボと比較して治癒効果が認められました。ティートリーは水虫の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1303075

【2】軽度から中等度のにきび患者124名を対象に、ティートリー精油5%含有製剤ならびににきび治療薬の過酸化ベンゾイル5%含有製剤を塗布したところ、医薬品に比べて作用は緩やかではあったが、にきびの症状の緩和が認めらました。ティートリーはにきび予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2145499

【3】ティートリー精油は伝統的に抗菌作用を持つと考えられています。インフルエンザウィルスとティートリー抽出物0.01%含有物質を添加したところ、インフルエンザウィルスの増殖が抑制されたことから、ティートリーはインフルエンザ抑制効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23966077

【4】ティートリーの精油には殺線虫効果があるとされている。本試験ではアニサキスの幼虫に対してのその殺虫効果を試験したところ、7~10μL/mLを添加することで48時間後にすべての虫に対して効果を示した。このことより、ティートリーには人のアニサキスに対する治療効果の可能性があると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24967378

【5】ティートリーから醸造したオイルは抗炎症作用があることが知られている。今回ティートリーに含まれているテルピネオールの免疫調整能について試験を行った。ティートリーにはIL-1β・IL-6・IL-10の生成を抑制する働きがあった。結果、ティートリーにはLPS刺激による炎症を抑える効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24947163

【6】本研究ではトリパノソーマに感染したラットに対するティートリーオイルを服用させた際の肝臓と腎臓の機能と免疫機能について調査した。ラットを4群に分けて(1mL/kgのオイルを飲んでいる・いない、トリパノソーマに感染している・していない)試験を行ったところ、オイルを飲んでいる群ではどちらの群も肝臓と腎臓に異常は見つからなかった。また、感染している群にオイルを飲ませたところその治療効果が認められたから、
ティートリーはトリパノソーマに対する予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24731531

【7】歯磨き粉にティートリーを配合し、24人の被験者に対して、口の中の細菌数などの調査をしたところ、配合歯磨きを利用した群に口腔(コロニー数・プラークの数)の改善が見られたことから、ティートリーはデンタルケアに役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24485734

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参考文献

・日本香料協会 香り百科事典 朝倉書店

・マリア・リス・バルチン アロマセラピーサイエンス フレグランスジャーナル社

・Tong MM, Altman PM, Barnetson RS. (1992) “Tea tree oil in the treatment of tinea pedis.” Australas J Dermatol. 1992;33(3):145-9.

・Bassett IB, Pannowitz DL, Barnetson RS. (1990) “A comparative study of tea-tree oil versus benzoylperoxide in the treatment of acne.” Med J Aust. 1990 Oct 15;153(8):455-8.

・Li X1, Duan S, Chu C, Xu J, Zeng G, Lam AK, Zhou J, Yin Y, Fang D, Reynolds MJ, Gu H, Jiang L. (2013) “A comparative study of tea-tree oil versus benzoylperoxide in the treatment of acne.” Molecules. 2013 Aug 9;18(8):9550-66. doi: 10.3390/molecules18089550..

・Gómez-Rincón C, Langa E, Murillo P, Valero MS, Berzosa C, López V. (2014) “Activity of tea tree (Melaleuca alternifolia) essential oil against L3 larvae of Anisakis simplex.” Biomed Res Int. 2014;2014:549510. doi: 10

・Nogueira MN, Aquino SG, Rossa Junior C, Spolidorio DM. (2014) “Terpinen-4-ol and alpha-terpineol (tea tree oil components) inhibit the production of IL-1β, IL-6 and IL-10 on human macrophages.” Inflamm Res. 2014 Jun 20.

・Baldissera MD, Da Silva AS, Oliveira CB, Vaucher RA, Santos RC, Duarte T, Duarte MM, França RT, Lopes ST, Raffin RP, Boligon AA, Athayde ML, Stefani LM, Monteiro SG. (2014) “Effect of tea tree oil (Melaleuca alternifolia) on the longevity and immune response of rats infected by Trypanosoma evansi.” Res Vet Sci. 2014 Jun;96(3):501-6.

・Santamaria M Jr, Petermann KD, Vedovello SA, Degan V, Lucato A, Franzini CM. (2014) “Antimicrobial effect of Melaleuca alternifolia dental gel in orthodontic patients. ”Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2014 Feb;145(2):198-202.

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