オリゴ糖

Oligosaccharide

オリゴ糖とは、いくつかの単糖がつながった糖質の一種です。
腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やす働きがあることから、腸内環境を整える効果があることで知られています。
血糖値や中性脂肪を上げにくい、また虫歯の原因にもなりにくいなどの特徴があります。

オリゴ糖とは?

●基本情報
オリゴ糖の定義は世界共通ではありませんが、一般的にこれ以上加水分解[※1]することができない単糖である、ブドウ糖や果糖[※2]などの糖が2~20個ほどつながったもののことを指します。
オリゴ糖の「オリゴ」とはギリシャ語で「少し」の意味を持ちます。そのため少糖類(しょうとうるい)と呼ばれることもあります。
オリゴ糖には約20種類ほどありますが、天然の動植物に存在するオリゴ糖は、そのほとんどがスクロース[※3]、ラクトース[※4]、マルトース[※5]、トレハロース[※6]といった二単糖[※7]です。
なかでも胃や小腸で消化、吸収されにくい難消化性の性質を持ち、腸内環境を整える効果で知られている食品に添加されているオリゴ糖には、主に以下のようなものがあります。

・フラクトオリゴ糖
ショ糖に1~3個の果糖が結合したもののことをいいます。消化酵素で分解されにくく、低カロリー甘味料として用いられます。腸内環境を整える効果を持つほか、虫歯になりにくい甘味料としても知られています。
フラクトオリゴ糖を多く含む食品として、にんにくごぼうアスパラガスなどがあります。

・イソマルトオリゴ糖
主にグルコース(ブドウ糖)を構成糖とするオリゴ糖の一種です。
腸内環境を整える効果を持ち、免疫力の向上にも役立ちます。また熱や酸に強く、防腐作用もあります。食品に旨みやコクを与えます。また防腐作用があるため、保存食に適しています。
イソマルトオリゴ糖を多く含む食品として、はちみつや味噌、醤油などがあります。

・ガラクトオリゴ糖
2~6個の糖が結合したものを指すことが多く、単糖であるガラクトースを主成分とするオリゴ糖の総称です。
腸内環境を整える効果を持ち、たんぱく質の消化、吸収をサポートします。また、ミネラルの吸収を促進する働きもあるといわれています。
ガラクトオリゴ糖は母乳に多く含まれています。

大豆オリゴ糖
大豆に含まれる各種オリゴ糖の総称です。甘みは砂糖の70%程度で、カロリーは50%程度です。熱や酸に強く、他のオリゴ糖よりも少量で腸内善玉菌の増殖を促進させるといった特徴があります。

・その他
ショ糖、麦芽糖などがあります。

●オリゴ糖の歴史
オリゴ糖の歴史は古く、今から約100年前にさかのぼります。
かつて、フランスのルイ・パスツール研究所では、食品の腐敗や腸内細菌などの研究が盛んに行われており、その研究所で小児科医をしていたティシエが、1899年に健康な母乳栄養児の糞便から大腸菌とは全く異なる性質を持つ、ビフィズス菌を発見しました。
この発見によりビフィズス菌の特性の研究が進められ、同時にビフィズス菌を増殖させる研究も同時に進められたのです。
そして、その増殖因子が母乳に含まれるオリゴ糖であることがわかり、ビフィズス菌発見後、多くの研究で様々な種類のオリゴ糖が特定されました。
現在、オリゴ糖は腸内環境を整える効果を持つとして多くの健康食品に配合されるようになり、その有効性からオリゴ糖配合商品の特定保健用食品(トクホ)[※8]商品も数多く認められています。

●体内での働き
オリゴ糖の中には、胃や小腸で消化・吸収されにくい難消化性のものもあります。このため、大腸内で善玉菌のエサとなり、その増殖を促進します。
腸は体の根っこといわれるように、栄養を吸収する大切な部分です。腸内で悪玉菌が増殖してしまうと、体内に便などの老廃物が溜まり、便秘を招きます。便秘は肌荒れや食欲不振などを招いてしまうため、腸内の環境を整えることは、人間にとって非常に大切なことです。
また、食物繊維と同様に腸内の余分なコレステロールや胆汁酸[※9]などを排泄する働きもあります。

<豆知識>虫歯になりにくい糖質「オリゴ糖」
オリゴ糖は、糖質であるにもかかわらず、虫歯の原因になりにくい糖質として注目されています。
虫歯の原因菌であるミュータンスは、糖質を栄養分として酸を出します。この酸が歯の表面を溶かします。これが虫歯といわれるものです。
オリゴ糖は、糖質でありながら虫歯の原因菌ミュータンスが、栄養分としてほとんど利用することができない成分です。そのため、虫歯の原因になりにくいとして、お菓子や健康食品などに使用されています。

[※1:加水分解とは、反応物における水の反応によって、分解物を得ることです。]
[※2:果糖とは、フルクトースとも呼ばれる糖の一種で、単糖のひとつです。]
[※3:スクロースとは、糖の一種であり、砂糖の主成分です。ブドウ糖と果糖が結合して生成されています。]
[※4:ラクトースとは、乳糖とも呼ばれる糖の一種です。母乳や牛乳などに含まれています。]
[※5:マルトースとは、麦芽糖とも呼ばれる水飴の主成分です。]
[※6:トレハロースとは、グルコースからできた糖の一種です。高い保水力を持つため、化粧品や食品に使用されています。]
[※7:二単糖とは、単糖が2個結合したもののことをいいます。]
[※8:特定保健用食品(トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]
[※9:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]

オリゴ糖の効果

●腸内環境を整える効果
オリゴ糖は、腸内でビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌のエサとなり、それらの増殖を促進することで腸内環境を整える効果が知られています。
ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌そのものを摂り入れることを、「プロバイオティクス」といい、オリゴ糖のように善玉菌のエサになることで間接的に善玉菌を増やすことを、「プレバイオティクス」といいます。オリゴ糖にはこのプレバイオティクスとしての有効性が認められたことから、特定保健用食品として認可され、甘味料やシロップのほか、ヨーグルトや飲料などに添加され、特定保健用食品(トクホ)の印がつけられています。【2】【3】【8】

●便秘を改善する効果
オリゴ糖は胃や小腸で消化・吸収されにくい栄養素のため、食物繊維と同様に腸内の不要物質を吸着し、体外に排出する働きがあります。
そのため、溜まった宿便も外に出す効果があるので便秘改善にも効果が期待できます。

●美肌効果
腸内の環境が悪くなると、老廃物が溜まり、悪玉菌が増殖し毒素を出します。この毒素こそが、肌荒れの原因と考えられています。
毒素は肌の新陳代謝を衰えさせ、活性酸素[※10]を発生させます。それにより、ニキビができたり、シミ・しわができたりと肌荒れを促進します。また、体内に毒素が溜まることで、血流が悪くなり肌の老化を促進します。
オリゴ糖は腸内で善玉菌のエサとなり、悪玉菌の増殖を抑える効果があるため間接的に肌荒れを防ぐ効果があります。

●動脈硬化を予防する効果
オリゴ糖によって腸内の善玉菌が増えると、血中の善玉(HDL)コレステロールが増えるといわれています。善玉コレステロールが増えることで、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を低下させるため、動脈硬化の予防にも効果があるとして期待されています。

●ミネラルの吸収を促進する効果
オリゴ糖を摂取することによって、カルシウムなどのミネラルが吸収されやすくなることがわかっています。【1】

[※10:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

オリゴ糖は食事やサプリメントから摂取できます

オリゴ糖を含む食材

○にんにく
○ごぼう
○はちみつ
○味噌
○醤油
○大豆

こんな方におすすめ

○腸内環境を整えたい方
○便秘でお悩みの方
○肌荒れでお悩みの方
○コレステロール値が気になる方
○糖尿病の方
○虫歯になりやすい方

オリゴ糖の研究情報

【1】ラットにガラクトオリゴ糖を含んだ餌を食べさせ、体内へのカルシウムとマグネシウム吸収の影響を調べました。抗生物質であるネオマイシンを与えることでガラクトオリゴ糖を与えた影響が抑えられることから、ガラクトオリゴ糖の良い影響を受けるためには、腸内環境を整えておくことが大切であると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11577732

【2】健康な乳児を対象に、ガラクトオリゴ糖とフラクトオリゴ糖を9:1の割合で含む乳児用ミルクを摂取させた結果、26週間後、糞便中の分泌型免疫グロブリンA濃度が高くなり、ビフィズス菌割合が多く、悪玉菌の割合が少なかったという報告がされています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18492847

【3】50歳以上の健康な成人37名を対象に、ガラクトオリゴ糖もしくは偽薬(プラセボ)4 gを含むジュースを1日2回、3週間にわたって摂取させました。結果、便中のビフィズス菌量が増加しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21910949

【4】健常大学生427名を対象とした二重盲検試験において、ガラクトオリゴ糖を1日2.5 gもしくは5.0 g、8週間摂取させたところ、ストレスによる胃の不調や風邪の症状が軽減したとの報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21525194

【5】フラクトオリゴ糖をマウスに4週間から6週間にわたって経口投与すると, IgA産生を誘導するサイトカイン である、インターロイキン-5, インターロイキン-6, インターフェロン-γの 産生が促進され,腸粘膜中に分泌される総IgA量が増加しました。このため、フラクトオリゴ糖の摂取によって粘膜上の免疫力が高まったと考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12784615

【6】小児の重度アトピー性皮膚炎患者に対して、Lactobacillus salivarius(ラクトバチルス・サリバリウス)とフラクトオリゴ糖と合わせて8週間摂取させると、好酸球陽イオンタンパク質濃度(ECP:アレルギーやぜんそくの指数)が低下しました。また、この作用はフラクトオリゴ糖を単独で与えるよりも、Lactobacillus salivariusと併用させることでより効果的であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21895621

【7】潰瘍性大腸炎患者41人を対象に、発酵乳に含まれるビフィズス菌およびガラクトオリゴ糖(GOS)投与の効果を調べました。その結果、糞便中のバクテロイデス菌の数が減少し、潰瘍性大腸炎患者の臨床状態を改善できるということが示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21525768

【8】ヒヨコ豆を含んだ食事が、健康な成人の糞便に与える影響を調べました。病原菌の種および腐敗菌は、ヒヨコ豆食事を与えたグループにおいてで低いという結果が得られました。ヒヨコ豆およびそこに含まれるオリゴ糖には腸の微生物組成を調節し、人間の腸の健康を促進する可能性が示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21831757

【9】乳児のアトピー性皮膚炎の治療に対するオリゴ糖の効果を調べた研究があります。二重盲検無作為プラセボ対照試験で、フラクトオリゴ糖群およびプラセボ群でアトピー性皮膚炎を備えた乳児で試験を実施しました。
この結果、フラクトオリゴ糖はアトピー性皮膚炎重症度スコアの低下を及ぼし、アトピー性皮膚炎と共に乳児における臨床症状に対する改善効果を発揮するということがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19508323

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参考文献

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・Chonan O, Takahashi R, Watanuki M. 2001 “Role of activity of gastrointestinal microflora in absorption of calcium and magnesium in rats fed beta1-4 linked galactooligosaccharides.” Biosci Biotechnol Biochem. 2001 Aug;65(8):1872-5.

・Scholtens PA, Alliet P, Raes M, Alles MS, Kroes H, Boehm G, Knippels LM, Knol J, Vandenplas Y. 2008 “Fecal secretory immunoglobulin A is increased in healthy infants who receive a formula with short-chain galacto-oligosaccharides and long-chain fructo-oligosaccharides.” J Nutr. 2008 Jun;138(6):1141-7.

・Walton GE, van den Heuvel EG, Kosters MH, Rastall RA, Tuohy KM, Gibson GR. 2012 “A randomised crossover study investigating the effects of galacto-oligosaccharides on the faecal microbiota in men and women over 50 years of age.” Br J Nutr. 2012 May;107(10):1466-75.

・Hughes C, Davoodi-Semiromi Y, Colee JC, Culpepper T, Dahl WJ, Mai V, Christman MC, Langkamp-Henken B. 2011 “Galactooligosaccharide supplementation reduces stress-induced gastrointestinal dysfunction and days of cold or flu: a randomized, double-blind, controlled trial in healthy university students.” Am J Clin Nutr. 2011 Jun;93(6):1305-11.

・Hosono A, Ozawa A, Kato R, Ohnishi Y, Nakanishi Y, Kimura T, Nakamura R. 2003 “Dietary fructooligosaccharides induce immunoregulation of intestinal IgA secretion by murine Peyer’s patch cells.” Biosci Biotechnol Biochem. 2003 Apr;67(4):758-64.

・Wu KG, Li TH, Peng HJ. 2012 “Lactobacillus salivarius plus fructo-oligosaccharide is superior to fructo-oligosaccharide alone for treating children with moderate to severe atopic dermatitis: a double-blind, randomized, clinical trial of efficacy and safety.” Br J Dermatol. 2012 Jan;166(1):129-36.

・Ishikawa H, Matsumoto S, Ohashi Y, Imaoka A, Setoyama H, Umesaki Y, Tanaka R, Otani T. 2011 “Beneficial effects of probiotic bifidobacterium and galacto-oligosaccharide in patients with ulcerative colitis: a randomized controlled study.” Digestion. 2011;84(2):128-33.

・Fernando WM, Hill JE, Zello GA, Tyler RT, Dahl WJ, Van Kessel AG. 2010 “Diets supplemented with chickpea or its main oligosaccharide component raffinose modify faecal microbial composition in healthy adults.” Benef Microbes. 2010 Jun;1(2):197-207.

・Shibata R, Kimura M, Takahashi H, Mikami K, Aiba Y, Takeda H, Koga Y. 2009 “Clinical effects of kestose, a prebiotic oligosaccharide, on the treatment of atopic dermatitis in infants.” Clin Exp Allergy. 2009 Sep;39(9):1397-403.

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