フォルスコリン

Forskolin

フォルスコリンは、「コレウス・フォルスコリ」という植物の根に含まれる成分です。
フォルスコリンには、エネルギー代謝に作用する物質の合成を促進することによって、脂肪を分解しやすくする効果があり、肥満予防のためのサプリメントの素材として利用されています。

フォルスコリンとは?

●基本情報
フォルスコリンは、インドやネパールに自生するシソ科の多年草である、コレウス・フォルスコリの根の部分に含まれている有効成分で、脂肪を分解して燃えやすくする効果が期待されています。
コレウス・フォルスコリは30~60cmほどの高さで、葉は卵型で縁にノコギリ状の切れ込みがあります。強い香りを持ち、枝先に長い穂のような花を多数付けています。
コレウス・フォルスコリの根は、フォルスコリンの含有量が最も高まる秋に収穫されます。
インドは世界三大ハーブ産地のひとつといわれており、約1500種のハーブやスパイスが自生、栽培されています。コレウス・フォルスコリをはじめとするインド原産のハーブは、欧米を中心に健康食品の素材として脚光を浴びています。

●フォルスコリンの歴史
フォルスコリンが含まれているコレウス・フォルスコリは、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ[※1]において重宝されており、滋養強壮のために食されるほか、心臓や肺の病気の治療薬としても用いられていました。
1970年代、インドでコレウス・フォルスコリについての研究が行われるようになると、根の部分に含まれる成分に血圧を下げる働きや、心臓の収縮を強める働きがあることが発見され、この成分はフォルスコリンと名付けられました。
フォルスコリンが持つこのような作用は、心臓病や喘息(ぜんそく)の治療に役立つとして、心不全の治療薬の素材としてフォルスコリンが利用されることとなりました。
その後さらに研究が進められると、フォルスコリンが脂肪の分解を促進するという働きが新たに発見され、フォルスコリンはダイエット食品の素材として近年注目を集めています。

●フォルスコリンの働き
フォルスコリンが持つ様々な生理作用は、アデニル酸シクラーゼを活性化させる働きによるものです。
アデニル酸シクラーゼとは、細胞膜に存在し、cAMPという物質をつくり出す酵素です。
cAMPは、細胞の中で情報伝達を支配しており、交感神経[※2]に働きかける成分です。交感神経は、心臓や血管などの機能に関わる自律神経であり、様々な生命活動を支えています。
また、cAMPは交感神経を介して細胞のエネルギー代謝に作用する成分であるため、フォルスコリンがアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPの合成力を高めることによって脂肪を分解し、エネルギーとして消費しやすくする効果が期待できます。

●フォルスコリンを摂取する上での注意
フォルスコリンは、血行を促進する働きがあるため、心臓への血流を促進する冠血管拡張薬を投与している時にフォルスコリンを摂取すると、めまいや立ちくらみを引き起こす可能性があります。
また、高血圧の治療薬を投与している時にフォルスコリンを摂取すると、血圧が下がりすぎてしまうことがあります。このような医薬品を使用している方は、医師、薬剤師に相談するなど注意が必要です。

[※1:アーユルヴェーダとは、インドで古くから語り継がれている東洋医学の1つです。「予防医学」の考え方を重視し、世界保健機構(WHO)が正式に奨励している医学です。]
[※2:交感神経とは、生命を維持している自律神経の一種です。不安・恐怖・怒りなどストレスを感じている時に働きます。]

フォルスコリンの効果

●肥満を予防する効果
フォルスコリンは脂肪の分解に関わるアデニル酸シクラーゼを活性化させることによって、脂肪の代謝を活発化させる働きが期待されています。
このようなフォルスコリンの働きは、肥満の予防につながります。
​肥満には、皮下脂肪が厚くなる「皮下脂肪型肥満」と、内臓の周りに脂肪が溜まる「内臓脂肪型肥満」があります。
内臓脂肪型肥満は、一見肥満には見えない体型でも、内臓に脂肪が溜まっている「隠れ肥満」のケースにも当てはまり、生活習慣病にかかりやすくなるといわれています。
カロリーの高い食事による摂取エネルギーの増加のほかに、朝食を抜く、夜食を食べるといった不規則な食生活や、運動不足が原因で余分な脂肪が増えてしまいます。その
結果、コレステロールなどの脂質が血液中に流れ出し、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、高血圧につながります。
また、動脈硬化で細くなった血管には、血栓[※3]ができやすくなり、心筋梗塞や
脳梗塞などの命に関わる病気が発生する危険性が高まります。
フォルスコリンは、体脂肪の分解を促進することによって、肥満を予防する効果が
あります。
女性の肥満者を対象に、フォルスコリン50mg相当を12週間投与した試験では、
除脂肪体重[※4]が増加し、体脂肪が減少したという結果が得られました。【4】【5】

●高血圧を予防する効果
フォルスコリンは、血圧を低下させる作用を持っています。
心臓は、毎分5~6リットルの血液を全身に送り出しています。この時に血液が動脈の
壁にかける圧力のことを血圧といいます。
血圧が高い状態が続くと、頭痛やめまい、動悸・息切れ、耳鳴り、手足のしびれといった症状が現れるほか、血管に無理な力がかかることで血管壁がもろくなり、動脈硬化の原因となります。
さらに、もろくなった血管に圧力がかかると、血管が破れやすくなるため、脳出血を引き起こす可能性が高くなります。
高血圧には原因が明確ではない「本態性高血圧」と、腎臓障害などの病気が引き起こす「二次性高血圧症」があります。成人の高血圧患者のほとんどが本態性高血圧といわれており、この原因には、遺伝に加えて、肥満や加齢、ストレス、喫煙、運動不足などが挙げられます。
フォルスコリンは、心臓の筋肉や血管壁に作用し、血管を拡張するため、血圧を低下させることによって高血圧を予防する効果があります。
女性の肥満者を対象に、フォルスコリンが配合されているサプリメントを8週間食前に投与した試験では、体重と体脂肪が減少し、除脂肪体重が増加したほか、血圧が低下傾向にあったという結果が報告されています。【1】【8】

●緑内障を予防する効果
フォルスコリンは、眼病のひとつである緑内障を予防する効果があるといわれています。
緑内障とは、視神経がダメージを受け、視野や視力が損なわれてしまう病気であり、進行すると失明にいたるといわれています。視神経のダメージは眼圧[※5]の上昇や眼底出血、糖尿病などによっても引き起こされます。
緑内障の原因には、ほかの目の病気によって引き起こされる続発緑内障や先天緑内障がありますが、原因が分からない原発緑内障が大半を占めるといわれています。
また、緑内障は自覚症状が出にくいため、発見が難しい病気でもあります。
フォルスコリンは、眼圧を低下させることによって緑内障を予防する効果があります。
この効果を利用して、フォルスコリンは点眼薬の配合成分としても利用されています。【3】【6】【7】

●血栓症を予防する効果
フォルスコリンは、血栓症を予防する効果があると考えられています。
血栓症とは血栓が血管を詰まらせることによって引き起こされる病気であり、例として脳梗塞や心筋梗塞などが挙げられます。
血栓は本来、血管の損傷を修復するために凝固機構を持っています。例えば、ケガをした時に時間が経つと血が止まるのは、血液の凝固作用によるものです。血液凝固機構が正常に働かず、血管内で小さな血の塊ができてしまったものを、血栓と呼びます。健康な血管内では血栓ができてもすぐに溶かされるため大きな問題にはつながりません。
しかし、食事や生活習慣などによって、血液中でコレステロールや中性脂肪が増加して血液がドロドロになると、できた血栓がスムーズに溶かされず、蓄積されたままになってしまいます。
その結果、血管が詰まりやすくなり、血栓症が引き起こされます。自覚症状がないまま突然発症することがあるため、日々予防することが重要となります。
また、脳梗塞などの脳血管疾患は、平成22年度の日本人の死因の第3位となっており、日本人の約6%が脳の血管が詰まることによって死亡していることが報告されています。(厚生労働省 人間動態統計より)
フォルスコリンには、心筋梗塞などの原因となる血栓をつくりにくくする効果があるため、血栓症の予防に役立ちます。【9】

●喘息を予防する効果
フォルスコリンは、気管の筋肉を拡張させる作用を持つため、喘息の予防効果があると考えられます。
喘息とは、気管支などの空気の通り道である気道が、炎症を起こすことによって狭くなる病気です。
気道が炎症を起こすと、外部からの刺激に敏感になり、気道が狭くなってしまうため、息苦しくなることがあります。
炎症を放置すると、気道の粘膜に変化が起こり、気道が狭くなったまま元に戻らなくなってしまうため、喘息は早期治療が重要だといわれています。
フォルスコリンの喘息に対する効果は、試験結果でも明らかになっています。喘息患者において、吸入器でフォルスコリン粉末 (10 mg) を投与すると、喘息患者の1秒間の強制呼気肺活量[※6]が上昇したという報告があります。【2】

[※3:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]
[※4:除脂肪体重とは、体重のうち、体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量のことです。]
[※5:眼圧とは、眼球の大きさ・形を一定に維持するために必要な眼球内の圧力のことです。]
[※6:肺活量とは、人間が息を最大限吸い込んだ後に肺から吐き出せる空気量のことです。喘息患者の場合、肺活量は小さくなるといわれています。]

食事やサプリメントで摂取できます

フォルスコリンを含む食品

○コレウス・フォルスコリ

こんな方におすすめ

○スリムな体型を目指したい方
○高血圧を予防したい方
○緑内障を予防したい方
○喘息を予防したい方

フォルスコリンの研究情報

【1】特発性うっ血性心筋症患者に対して、フォルスコリンを静脈投与すると、心拍出量および肺動脈圧が改善されました。この結果より、フォルスコリンには心血管強化作用ならびに血圧低下作用が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1696672

【2】喘息患者にフォルスコリン粉末10mg を単回吸入投与すると、喘息患者の呼気肺活量が上昇しました。この結果よりフォルスコリンには喘息改善効果が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8422745

【3】ヒトの目の細胞(ヒト毛様体上皮細胞)にフォルスコリンを投与すると、アデニル酸シクラーゼを活性化することにより、目の房水の流入を抑制し、眼圧低下作用を示します。このはたらきにより、フォルスコリンは緑内障予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6538189

【4】肥満男性30名にコレウス・フォルスコリ抽出物 (フォルスコリン10%含有) を1日あたり 500mg 、12週間摂取させたところ、体脂肪量の低下と血中遊離テストステロンの増加が認められました。フォルスコリンには抗肥満効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16129715

【5】軽中程度肥満女性19名において、コレウス・フォルスコリ抽出物 (フォルスコリン10% 含有) を1日当たり500mg 、12週間摂取させたところ、体重低下は認められなかったが、空腹感と満腹感が低下しました。この結果より、フォルスコリンには肥満患者における過食予防効果が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18500958

【6】緑内障患者(POAG)16名において、フォルスコリンならびにルチンとビタミンB1, B2 を配合したサプリメントを40日間摂取させると眼圧が低下することが確認されました。このことよりフォルスコリンを含むサプリメントには緑内障予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20589347

【7】白内障や緑内障の治療に役立つ天然物や成分の研究が進んでおり、その中でフォルスコリンが緑内障による視野欠損と視力低下の予防に役立つことがこれまでの研究で報告されており、フォルスコリンの機能性が注目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11302779

【8】高血圧患者49名において、フォルスコリンを摂取させると、収縮期ならびに拡張期血圧の低下が確認されました。フォルスコリンには高血圧予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22131759

【9】ヒツジにフォルスコリンを投与すると、血管拡張作用と血小板凝集抑制作用が確認されました。このはたらきにより、フォルスコリンには血栓症予防効果と高血圧予防効果、血流改善効果が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7725780

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参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・日経ヘルス サプリメント大事典 日経BP社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・独立行政法人国立栄養研究所 “「健康食品」の安全性・有効性情報 「健康食品」の素材情報データベース”

・白土城照 中・高年の目の病気がすべてわかる本 主婦と生活社

・Baumann G, Felix S, Sattelberger U, Klein G. 1990 “Cardiovascular effects of forskolin (HL 362) in patients with idiopathic congestive cardiomyopathy–a comparative study with dobutamine and sodium nitroprusside.” J Cardiovasc Pharmacol. 1990 Jul;16(1):93-100.

・Bauer K, Dietersdorfer F, Sertl K, Kaik B, Kaik G. 1993 “Pharmacodynamic effects of inhaled dry powder formulations of fenoterol and colforsin in asthma.” Clin Pharmacol Ther. 1993 Jan;53(1):76-83.

・Caprioli J, Sears M, Bausher L, Gregory D, Mead A. 1984 “Forskolin lowers intraocular pressure by reducing aqueous inflow.” Invest Ophthalmol Vis Sci. 1984 Mar;25(3):268-77.

・Godard MP, Johnson BA, Richmond SR. 2005 “Body composition and hormonal adaptations associated with forskolin consumption in overweight and obese men.” Obes Res. 2005 Aug;13(8):1335-43.

・Henderson S, Magu B, Rasmussen C, Lancaster S, Kerksick C, Smith P, Melton C, Cowan P, Greenwood M, Earnest C, Almada A, Milnor P,Magrans T, Bowden R, Ounpraseuth S, Thomas A, Kreider RB. 2005 “Effects of coleus forskohlii supplementation on body composition and hematological profiles in mildly overweight women.” J Int Soc Sports Nutr. 2005 Dec 9;2:54-62.

・Pescosolido N, Librando A. 2010 “Oral administration of an association of forskolin, rutin and vitamins B1 and B2 potentiates the hypotonising effects of pharmacological treatments in POAG patients.” Clin Ter. 2010;161(3):e81-5.

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・Jagtap M, Chandola HM, Ravishankar B. 2011 “Clinical efficacy of Coleus forskohlii (Willd.) Briq. (Makandi) in hypertension of geriatric population.” Ayu. 2011 Jan;32(1):59-65.

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