フラボノイド

flavonoid

フラボノイドとは、植物に含まれている色素、苦味、辛味成分であり、ポリフェノールのひとつです。
フラボノイドは種類によって特徴や作用が異なりますが、多くが強力な抗酸化作用を持っており、サプリメントなどに広く利用されています。

フラボノイドとは?

●基本情報
フラボノイドとは、植物に含まれている色素や苦味、辛味成分であり、ポリフェノールの大分類のひとつです。
フラボノイドは一定の化学構造を持つ成分の総称で、植物の葉、茎、幹などに含まれており、現在まで4000種類以上が発見されています。
フラボノイドは、植物が紫外線や害虫などから身を守るために生成している物質であり、色素や苦味成分のもととなっています。
フラボノイドは、構造の違いによってフラボノール類、フラボン類、カテキン類、フラバノン類、アントシアニン類、イソフラボン類などに分けられています。

●主なフラボノイドの種類
フラボノイドは、各成分によって様々な特徴を持ちますが、強力な抗酸化作用を持った成分が多く存在します。
フラボノイドの持つ働きは、それらを摂取した人間の生体内においても作用し、効果を発揮します。

アントシアニン
アントシアニンとは、アントシアニン類に分類されるフラボノイドの一種です。
ブルーベリービルベリーカシスなどに含まれている青紫色の天然色素であり、自然界から発見されているアントシアニンの種類は、500種類以上にものぼります。
また、アントシアニンは梅干しなどの着色にも用いられており、その着色作用は、合成着色料に比べて安全性が高いことから、食品分野での需要も非常に高いことで知られています。
アントシアニンの主な働きは、目に対する働きかけや抗酸化作用であり、視覚機能を改善する効果が注目されています。

ヘスペリジン
ヘスペリジンとは、ビタミンPとも呼ばれており、フラバノン類に分類されるフラボノイドの一種です。
ヘスペリジンは青みかんなどの柑橘類に含まれており、特に皮やすじに多く含まれている成分です。
ヘスペリジンには、熱に弱いビタミンCを壊れにくくし、その働きをサポートする作用があるため、ビタミンCの働きによるコラーゲンの生成を促進することができます。
コラーゲンは、血管、肌、骨などに存在している成分であるため、ヘスペリジンを摂取することによってもそれらの部位の強化を図ることができます。

カテキン
カテキンとは、カテキン類に分類されるフラボノイドの一種です。
カテキンは主に緑茶に多く含まれており、強力な抗酸化作用を持った成分です。
カテキンが持つ抗酸化力は強力で、生活習慣病の予防などに効果的であるとされています。
また、この抗酸化作用を利用して、カテキンは食用油や肉、魚などの脂質の酸化を防ぐための品質保持剤としても用いられています。

イソフラボン
イソフラボンとは、イソフラボン類に分類されるフラボノイドの一種です。
イソフラボンは、大豆などのマメ科の植物や、レッドクローバーなどに多く含まれており、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと似た働きを行うことから、「植物性のエストロゲン」と呼ばれています。
イソフラボンにも様々な種類があり、大豆に含まれるイソフラボンはダイジン、ゲニステインなどと呼ばれます。

ケルセチン
ケルセチンとは、ビタミンPとも呼ばれており、フラボノール類に分類されるフラボノイドの一種です。
ケルセチンは、たまねぎ、緑茶、りんごの皮などに多く含まれている黄褐色の色素成分であり、熱に強い性質を持っています。
ケルセチンは抗酸化作用や、アレルギー症状を抑制する作用などを持っています。

ルチン
ルチンとは、ビタミンPとも呼ばれており、フラボノール類に分類されるフラボノイドの一種で、そばやイチジクに多く含まれています。
そばには、毛細血管を強化することによる血圧の降下作用が知られていますが、これはルチンの働きによるものです。
ルチンはその他にも、血栓の生成を予防する作用、ビタミンCの吸収を促進する作用などを持ちます。

フラボノイドの効果

アントシアニン
●視機能を改善する効果
アントシアニンの持つ作用によって、視機能を改善する効果が期待できます。
アントシアニンには、目の奥に存在しているロドプシンの働きをサポートする作用があります。
ロドプシンとは、目の網膜に存在しているたんぱく質の一種です。
人間は、外界から入ってきた光の情報を脳が映像として捉えることで、ものを見ることができています。
ロドプシンは、目に入ってきた光の情報を、電気信号に変えて脳に伝える役割を担っており、人間の視覚においてたいへん重要な物質です。
ロドプシンは、光の情報を電気信号に変える際に分解されます。しばらくするとロドプシンは再合成されますが、また光の情報を受け取ると分解され、また再合成を繰り返しています。
長時間ものを見続けていると、ロドプシンの再合成が追いつかなくなり、目のかすみや疲れ目などにつながるのです。
アントシアニンには、ロドプシンの再合成を促進する作用があるため、目の疲れなどに働きかけ、視機能を改善する効果が得られると考えられています。
また、アントシアニンは抗酸化作用も持っているため、活性酸素からのダメージによる眼病の予防・改善効果なども期待されています。【1】【2】

ヘスペリジンルチン
●血流を改善する効果
ヘスペリジンとルチンは、それぞれの持つ作用によって、血流を改善する効果が期待されています。

ヘスペリジンのビタミンCの働きをサポートする作用によって血流が改善できます。
ビタミンCは、コラーゲンの生成に深く関与している成分ですが、熱に弱く、壊れやすいのが弱点です。
ヘスペリジンはビタミンCを壊れにくくする作用があるため、ビタミンCによるコラーゲンの生成を促進することができます。
コラーゲンは、血管の構成成分であるため、コラーゲンの生成を促すことで抹消血管を強くしなやかにすることができると考えられています。
抹消血管は血流が悪くなりやすい部分ですが、ヘスペリジンの働きによって血管を強化すると、血流を改善する効果が得られるのです。

ルチンは抗酸化作用によって、血流を改善することができるといわれています。
血流の悪化する大きな原因のひとつに、血栓の生成が挙げられます。
血栓とは、血管中にできる血の塊を指し、血栓が生成される大きな要因は、悪玉(LDL)コレステロールが活性酸素によって酸化されることにあります。
ルチンの持つ抗酸化作用によって、活性酸素は除去されると、血管内に血栓ができることを防ぎ、血流を改善する効果が得られると考えられています。

ヘスペリジンとルチンが持つこのような作用により血流を改善することで、冷え性の改善や免疫力の向上などの効果も期待できます。【3】

カテキン
●生活習慣病の予防・改善効果
カテキンの持つ抗酸化作用には、生活習慣病の予防・改善効果があると考えられています。
生活習慣病とは、動脈硬化や心筋梗塞など、病気の発症に生活習慣が深く関わっていると考えられている病気の総称であり、その主な原因としては、活性酸素の増加が挙げられます。
活性酸素とは、人間の体内に侵入してきた細菌やウイルスを撃退する力を持った酸素の一種です。
しかし、紫外線、ストレス、喫煙などの要因によって増加した活性酸素は、体内のたんぱく質、脂質、DNAなどを破壊し始めます。
また、活性酸素は血液中の悪玉(LDL)コレステロールと結びついて、血栓の原因にもなるといわれています。
カテキンの持つ抗酸化作用によって、活性酸素を抑制すると、生活習慣病の原因を抑えることができるため、生活習慣病の予防・改善効果につながるといえます。【4】【5】

イソフラボン
●更年期障害の症状を改善する効果
イソフラボンの作用によって、更年期障害の症状を改善することができます。
更年期障害とは、女性に多い症状であり、閉経などによる女性ホルモンのバランスの乱れが原因で、顔のほてり、発汗、倦怠感などの症状を示します。
イソフラボンは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンと似た働きを行うことができるため、女性ホルモンの乱れによる症状を改善することができると考えられています。
また、イソフラボンには分泌量の多い女性ホルモンを抑制する作用もあるため、女性ホルモンの調整を行うことによって、更年期障害の症状を改善する効果が得られると考えられています。【6】【7】

ケルセチン
●アレルギーを抑制する効果
ケルセチンは、アレルギーを抑制する効果あるといわれています。
アレルギー症状は、ヒスタミン[※1]という物質が過剰に分泌されることが原因であるとされていますが、ケルセチンにはヒスタミンを抑制する作用があるため、アレルギーを抑制することができると考えられています。

[※1:ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症の原因となる化合物のことです。体内の細胞で合成され、外部からの刺激により放出されます。これにより、炎症やアレルギーという症状が現れます。]

食事やサプリメントで摂取できます

○ブルーベリー、ビルベリーなど<アントシアニン>
○青みかんなどの柑橘類<ヘスペリジン>
○緑茶など<カテキン>
○大豆、亜麻仁など<イソフラボン>
○緑茶、りんご、たまねぎの皮など<ケルセチン>
○そば、イチジクなど<ルチン>

こんな方におすすめ

○目の健康を維持したい方
○血流を改善したい方
○生活習慣病を予防したい方
○更年期障害でお悩みの方
○アレルギー症状を緩和したい方

フラボノイドの研究情報

【1】In Vitroの研究では、酸化ストレスの誘発によって網膜神経節細胞は障害を受けるが、ビルベリーエキスとアントシアニジンによってその障害が減少され、細胞内に発生する酸化ストレスも抑えました。In vivoの研究ではビルベリーエキスがNMDA誘発マウス神経節細胞障害を減少させました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19415665

【2】カエル網膜の光を感じる細胞桿体外節(ROS)に、カシス中の4種のアントシアニンを投与したところ、シアニジン-3-グルコシドとシアニジン-3-ルチノシドはロドプシンの再合成を促進することが確認され、またロドプシン再合成の中間体の生成にはシアニジン-3-ルチノシドが重要な役割を果たすことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12769524

【3】ヘスペリジン(HES)およびグルコシルヘスペリジン(GHES)が高血圧自然発症ラット(SHR)に対してどのような作用を及ぼすかについて検討しました。SHRに30mg/kg/日のHESまたはGHESを25週間与えたところ、血管の直径は大きくなり、また平均血圧が改善されました。さらに血中HDLコレステロールは増加することがわかりました。これらのことからGHESおよびHESの摂取は、血圧を下げる働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14974738

【4】健常な成人男子18名対象の研究で、緑茶抽出物(カテキン254mg 含有)を摂取した60分後には、血中の緑茶カテキン成分、エピガロカテキンガレートが増加し、それに比例するように、血中の酸化物質(PCOOH)の濃度が減少しました。この結果より、緑茶カテキンには血液中の抗酸化力を増加させ、心臓血管疾患を予防するはたらきが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10552751

【5】40歳以上の男性1371名において、緑茶を1日(3杯以下、4~9杯、10杯以上)摂取する人の生活習慣病の度合いを比較したところ、緑茶の摂取が多い人ほど、血中総コレステロールやトリグリセリド値が低く、HDLコレステロールの割合が高くなり、LDL及びVLDLコレステロールの割合が低下しました。また10杯以上の人では、肝臓障害の指標となるASTやALTの値が低下しており、緑茶カテキンには生活習慣病予防と肝臓保護効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7711535

【6】更年期の日本人女性58名に、大豆イソフラボンを1日40mg 、4週間摂取させたところ、更年期症状であるほてりが緩和され、高血圧患者での収縮期及び拡張期血圧は有意に低下したことから、大豆イソフラボンに更年期症状緩和効果があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11870016

【7】卵巣摘出更年期障害ラットにおいて、大豆イソフラボンを28日間摂取させたところ、更年期障害症状の1つ、血中総コレステロール、トリグリセリド値の上昇を抑制した。また日本人女性40名(20-60歳) において、大豆イソフラボンを1日40mg 、6カ月間摂取させたところ、内臓脂肪、血中脂質の改善が見られたことから、大豆イソフラボンの更年期障害予防効果が示唆されています。
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902286277174432

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参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・Matsunaga N, Imai S, Inokuchi Y, Shimazawa M, Yokota S, Araki Y, Hara H. (2009) “”Bilberry and its main constituents have neuroprotective effects against retinal neuronal damage in vitro and in vivo.”” Mol Nutr Food Res.2009Jul;53(7):869-77.

・Matsumoto H, Nakamura Y, Tachibanaki S, Kawamura S, Hirayama M.  2003 “Stimulatory effect of cyanidin 3-glycosides on the regeneration of rhodopsin.” J Agric Food Chem. 2003 Jun 4;51(12):3560-3.

・Ohtsuki K, Abe A, Mitsuzumi H, Kondo M, Uemura K, Iwasaki Y, Kondo Y. (2003) “Glucosyl hesperidin improves serum cholesterol composition and inhibits hypertrophy in vasculature.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2003 Dec;49(6):447-50.

・Nakagawa K, Ninomiya M, Okubo T, Aoi N, Juneja LR, Kim M, Yamanaka K, Miyazawa T. 1999 “Tea catechin supplementation increases antioxidant capacity and prevents phospholipid hydroperoxidation in plasma of humans.” J Agric Food Chem. 1999 Oct;47(10):3967-73.

・Imai K, Nakachi K. 1995 “Cross sectional study of effects of drinking green tea on cardiovascular and liver diseases.” BMJ. 1995 Mar 18;310(6981):693-6.

・Uesugi S, Watanabe S, Ishiwata N, Uehara M, Ouchi K. 2004 “Effects of isoflavone supplements on bone metabolic markers and climacteric symptoms in Japanese women.” Biofactors. 2004;22(1-4):221-8.

・Nagakura T, Matsuda S, Shichijyo K, Sugimoto H, Hata K.2003 “Studies on the Effects of Soybean Isoflavone Aglycon on Obesity and Blood Lipid Profile.” Eastern Medicine. 2003; 19: 39-50

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