カプサンチン

capsanthin

カプサンチンは、赤ピーマンに含まれる赤色色素のことでカロテノイドの一種です。抗酸化作用を持ち、善玉(HDL)コレステロールを上昇させる働きがあるため老化や動脈硬化を予防する働きがあります。また近年ガンの予防効果も示唆され、注目されています。

カプサンチンとは?

●基本情報
カプサンチンとは、赤ピーマンやとうがらしに含まれる赤色色素のことでカロテノイドの一種です。カロテノイドは、カロテン類とキサントフィル類に分類されます。このうち水素と炭素でのみ構成される成分をカロテン類、それ以外のものを含む場合、キサントフィル類に分類されます。カプサンチンは分子の中に酸素を含んでいることからキサントフィル類に分類されます。ルテインアスタキサンチンもこの仲間です。
カプサンチンは、ナス科トウガラシ属の仲間に豊富に含まれているためトウガラシ属を意味するCapsicumから、カプサンチンと名づけられました。

●カプサンチンの性質
カプサンチンには強力な抗酸化作用[※1]があります。その抗酸化力はβ-カロテンの1.5倍でトマトに含まれることで有名なリコピンと同じぐらいのパワーだといわれています。この抗酸化力から生活習慣病[※2]の予防や老化の予防に効果的であると期待されています。また、赤ワインやれんこん、春菊などポリフェノールを多く含む食品と一緒に摂ると相乗効果が得られます。

<豆知識>赤ピーマンに含まれるカプサンチン
カプサンチンが含まれることで最もよく知られているのが赤ピーマンです。実は、この赤ピーマンは緑色のピーマンが完熟したもので、約7週間ほどで緑色から赤色に変化します。この7週間の間でピーマンは太陽の光をたっぷりと浴びます。太陽の光をたっぷり浴びることで、細胞に含まれる緑色の色素であるクロロフィルが分解され、赤色の色素であるカプサンチンが生成されます。また、ピーマンは太陽の光をたくさん浴びるほどビタミンCが豊富に含まれるため、赤ピーマンはビタミンCの含有量も多く、その量は、レモンの2倍といわれています。

[※1:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※2:生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。]

カプサンチンの効果

●老化を防ぐ効果
カプサンチンは、優れた抗酸化作用をもっており、体内をサビつかせる一因となる活性酸素や一酸化窒素を除去する働きがあります。一酸化窒素は健康な人でも体内でつくられていますが、過剰に発生すると体内のサビつきの原因となります。また、一酸化窒素はDNAの損傷を引き起こす可能性があるといわれています。カプサンチンはこれらの体内で過剰に発生した一酸化窒素を除去し、サビつきを抑制してくれます。体内がサビつくと細胞の働きが低下し、生活習慣病をはじめとする病気やシミ、シワなどお肌の老化を促すため、老化の予防には大変効果があるといえます。
また、活性酸素や一酸化窒素は細胞のガン化を誘発するともいわれています。カプサンチンは抗酸化力が高く、ガンに対しても予防効果が期待できるのではと近年注目されています。【2】

●動脈硬化を予防する効果
カプサンチンは動脈硬化[※3]を予防する効果があります。動脈硬化は血管の老化といわれています。動脈はゴムのように弾力があり、血液を体全体に運ぶパイプの役割をしています。しかし、生活習慣の乱れからくる肥満や脂質異常症[※4]などが原因となり、血管の内側にコレステロールなどの脂質が溜まり、血管が狭くなります。この状態が続くことで血管が硬く、もろくなり動脈硬化が起きてしまうのです。
カプサンチンには善玉(HDL)コレステロール[※5]を上昇させる働きがあります。善玉(HDL)コレステロールは体内に溜まった余分なコレステロールを肝臓に運んだり、血管の壁に溜まったコレステロールを引き出して回収してくれます。これにより動脈硬化の予防につながります。動脈硬化は毎日の食生活を見直すことで予防することができます。塩分・脂肪・コレステロールの取りすぎには注意が必要です。【1】

[※3:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※4:脂質異常症とは、血液中のコレステロール値や中性脂肪が高い状態を表します。高脂血症ともいわれています。]
[※5:善玉(HDL)コレステロールとは、血管壁に溜まった余分なコレステロールを抜き取って、肝臓に運ぶ機能がある物質です。動脈硬化などを防ぐ役割があります。]

食事やサプリメントで摂取できます

カプサンチンを多く含む食品

○赤ピーマン
パプリカ
○とうがらし

こんな方におすすめ

○老化を防ぎたい方
○肌のハリや弾力を保ちたい方
○いつまでも若々しくいたい方
○生活習慣病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方

カプサンチンの研究情報

【1】パプリカから精製したカプサンチンを2週間ラットに食餌させたところ、トリアシルグリセロールおよび総コレステロール値をあげずに、血漿HDLコレステロールに有意な上昇が認められ、また、カプサンチンの摂取量と血漿HDLコレステロールの上昇には、有意な相関関係が認められました。さらにapoA5のmRNAやレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼのアップレギュレーションが認められました。これらの結果から、カプサンチンには、血漿中のHDLコレステロールを上昇させる働きがあることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19646292

【2】一酸化窒素(NO)、ペルオキシナイトライト誘発皮膚癌モデルマウスを用いて、カプサンチンの作用について検討したところ、腫瘍はコントロール群8個/匹に対して、5.8個/匹まで抑えることができました。このガン抑制作用には、カプサンチンがNOとペルオキシナイトライトそのものを抑える抗酸化作用が考えられました。
http://www.jsb.gr.jp/fcn/FCN.01_01.pdf

参考文献

・中村丁次 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・Aizawa K, Inakuma T. (2009) “Dietary capsanthin, the main carotenoid in paprika (Capsicum annuum), alters plasma high-density lipoprotein-cholesterol levels and hepatic gene expression in rats.” Br J Nutr. 2009 Dec;102(12):1760-6. doi: 10.1017/S0007114509991309.

・眞岡孝至、持田晃一、小塚睦夫、圓城文男 (2006) “パプリカ抽出物およびカプサンチンの一酸化窒素またはペルオキシナイトライトによって誘起される発がんに対する予防効果” 食品・臨床栄養 2006 1:7-14

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