あけび

akebia
木通 野木瓜 通草
Akebia quinata

秋の味覚のひとつであるあけびは、果実や果皮、新芽を食材として、つるは生薬の木通として利用されてきました。
あけびには、美肌に働きかけるといわれているビタミンCやむくみを解消するカリウム、生活習慣病の予防をするあけびサポニンが豊富に含まれています。

あけびとは?

●基本情報
あけびは、あけび科あけび属に属する落葉性植物の一種です。
木は雌雄同株であるが雌雄異花で淡紫色の花を4 月~5月に咲かせます。
長さが10cmくらいの果実をつけ、熟すと果皮がぱっくり開き、中の果実はそのまま食べることができます。乳白色のゼリー状の果実で、甘味があり、黒く小さな種がたくさん入っています。
また、果皮は揚げ物や炒め物などにも使われ、春の新芽や未熟果も東北地方の山菜として食卓に並んできました。
あけびの名前の由来は、実が熟すと口がぱっくり開くことから「開け実」という名前がつけられました。
また、あけびは漢字では「木通」または「通草」と書きますが、あけびのつるに空洞があり空気が通るからといわれています。

●あけびの歴史
あけびはつる性の植物で、古くから日本や中国などの東アジアの山に自生しており、その地域の人々に食べられていました。江戸時代にはあけびの種から油を採取していたようですが、商業植物として栽培されるようになったのは最近になってからです。現在、市場に出荷されているものは山形県産が多く、その他の産地として愛媛県や長野県、秋田県が有名です。

●あけびの種類
・あけび
日本に昔から自生しているもので、市販されている最もポピュラーな種類です。小葉の数は5枚で、葉は楕円形をしています。果実は小さく、果皮は紫のものと褐色のものがあります。

・ミツバあけび(三葉あけび)
果実は大きめで色づきがよく、商業用としても品種改良されています。小葉3枚で、葉が少しギザギザしています。あけびの中では一番甘味が強く、5~15cmの俵型をしています。
代表的な品種として鷹紫や初ひめ、紫峰、秋月、晩秋、白色の山初雪などがあります。

・ゴヨウあけび(五葉あけび)
「あけび」と「ミツバあけび」の交雑種といわれています。小葉は5枚で、細長い楕円形をしており、種類によっては葉の縁がギザギザしているものもあります。

・白あけび
果皮は着色しませんが、あけびと同様に熟すと果皮が割れ、中の果実を食べることができます。

●美味しいあけびの選び方
果皮の色づきがよく、ハリがあるものを選びましょう。手に持った時に重量感ありずっしりとしたものが美味しいあけびです。また、果皮が割れているものは完熟している証拠です。また、熟しても果皮が紫色にならない白あけびという種類もあります。
あけびを保存する際の注意点として、ポリ袋に入れて乾燥しないよう冷蔵庫で保存し、3~5日以内に食べるようにします。完熟したあけびは日持ちしないので、果肉はすぐに食べきり、皮もなるべく早めに調理します。

●あけびの食べ方
あけびは、実の中の種を包んでいる白い部分、皮の部分、若芽の三種を調理して食べることができます。

・果肉
果肉は種を包むように白いゼリー状になっています。香りはあまりありませんが、ほのかな甘みがあります。
生のまま使ったり、果実酒をつくることもできます。また、種を取り除いてアイスクリームやシャーベットなどのお菓子にしても美味しく食べることができます。

・果皮
やや苦味があり、東北地方、特に山形県では古くから郷土料理として親しまれてきました。
あくが多いため、油や味噌を使った料理が適しています。炒め物、揚げ物、焼き物のほか、味噌炒めや味噌田楽などがおすすめです。そのほか、塩もみし、湯通ししあく抜きをして、蒸し物や煮物にも利用できます。地方料理では、中に山菜やごぼうなどを詰めて料理されることも多いようです。

・若芽
季節を感じさせる山菜のひとつとして、東北地方の食卓に並んできました。 天ぷらや和え物などで食べることができます。

●あけびに含まれる成分と性質
あけびは炭水化物が多く、甘みが強いことが特徴です。果物としては分が少なく、カロリーはやや高めです。
あけびにはコラーゲンの生成を助けるビタミンCを豊富に含まれるため、肌のハリをたもち、シミやそばかすを予防するはたらきが期待されています。
また、果皮には強い抗酸化作用をもつポリフェノールの一種であるアントシアニンや利尿作用のあるカリウムが豊富に含まれています。
あけびのつるには、サポニンカリウムが豊富に含まれており、細かく切って乾燥させたものは木通(もくつう)と呼ばれています。木通を煎じたものは膀胱炎や尿道炎の改善、むくみの解消に良いとされ、古くから漢方の生薬として利用されてきました。
あけびには、ビタミンCやカリウム、アントシアニン、あけびサポニンなどが豊富に含まれているため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

あけびの効果

●美肌効果
あけびの果肉にはイチゴと同じくらいビタミンCが含まれています。
人間の皮膚は、紫外線の刺激を受けるとアミノ酸のひとつであるチロシンが、チロシナーゼという酵素の働きによってメラニンという黒い色素に変わります。シミ・そばかすは、このメラニン色素が沈着することによって起こります。ビタミンCはチロシナーゼの働きを阻害することでメラニン色素の沈着 (シミ)を防ぎ、透明感のある肌を維持する効果があるため美白効果が期待できます。【4】
また、ビタミンCはコラーゲンの合成を助けて肌のしわを防いだり、傷ややけどの治りを良くします。

●生活習慣病の予防・改善効果
あけびの果皮には高血圧を予防するカリウムが多く含まれています。
食塩の成分ナトリウムは摂り過ぎると、高血圧を引き起こす原因となります。体内のカリウムは腎臓の働きにより、汗や尿として排出されます。カリウムが排出される際、同じ量のナトリウムも排出されるため、バランスの良い食事をしていれば多少ナトリウムの摂取量が増えても摂り過ぎにはなりません。
しかし、偏った食事をすることによって、ナトリウムの摂取量のみが過剰になってしまったり、アルコールの飲み過ぎなどによって、カリウムが不足してしまったりすると、高血圧を引き起こす危険性が高まります。
血中のナトリウムが増加すると、血中のナトリウムを薄めようと細胞から水分が流れ出ます。それが原因となり血液量が増え、血液を送り出すにはより強い力が必要となります。その結果血圧が上がり、高血圧となってしまいます。カリウムを必要量摂ることによりナトリウムの排出を促し、高血圧になるリスクを軽減する効果があります。
また、生活習慣病の発病には、活性酸素が関与しているといわれています。
活性酸素は、紫外線や喫煙、ストレスなどが原因で体内に発生し、細胞や血管など体の様々なところにダメージを与えます。
また、活性酸素は生活習慣病だけでなく、老化やその他の病気を引き起こす原因のひとつだといわれています。
あけびのつるに含まれるサポニンや皮に含まれるアントシアニンには強い抗酸化力があるため、生活習慣病を予防する働きがあると考えられています。
さらに、あけびには食物繊維を豊富に含まれています。食物繊維はコレステロールを除去する働きや善玉菌を腸内において活性化させる働きがあります。
このように、あけびには生活習慣病を予防することのできる栄養素が豊富に含まれています。【1】

●腸内環境を整える効果
あけびには、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は腸内に溜まった不要な老廃物を体外へ排出する働きを持つほか、善玉菌を増やす働きもあるため、腸内の環境を整える効果が期待されており、特に便秘には効果的な成分です。【5】

●むくみを予防・改善する効果
あけびの果皮やつるにはカリウムが豊富に含まれています。
ナトリウムの過剰な摂取、またはカリウムの不足などで、カリウムとナトリウムのバランスが調整できなくなると、細胞内のナトリウムの濃度を下げるために細胞外から水分を取り入れます。血管の細胞でこのようなことが起こると、血管壁が水分で膨れるため血圧が高くなり、顔では組織液やリンパ液が薄められることによりむくみが現れます。
このため、カリウムを豊富に含むあけびを摂取することによりむくみの解消につながるといえます。【6】

●貧血を予防する効果
あけびには、貧血予防に効果があるとされる葉酸が豊富に含まれています。
葉酸は、ビタミンB12とともに補酵素として働き、赤血球のもととなる赤芽球の合成に関わっています。赤芽球が正常につくられないと、赤血球も正常につくられないため、葉酸を豊富にふくむあけびは、貧血の予防に効果があるといえます。【7】

あけびは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○お肌を美しく保ちたい方
○生活習慣病を改善したい方
○貧血気味の方
○おなかの調子が気になる方
○むくみが気になる方

あけびの研究情報

【1】アケビのエタノール抽出物により、TNFαが誘発するMAPKのリン酸化を抑制され、TNFα誘発-大動脈平滑筋細胞(HASMCs)の炎症が抑制されたことから、アケビは抗炎症作用ならびに動脈硬化予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23175425

【2】アケビのフルーツオイルの内容をガスクロマトグラフィー等で分析した結果、有効成分であるリモネン、オイゲノール、オクタナール、p-シミンが分析されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17898464

【3】アケビの茎を分析したところ、有効成分であるトリテルペン、サポニンが分析されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12913236

【4】B16マウスメラノーマ細胞およびヒト皮膚細胞にビタミンCを12週間投与したところ、チロシナーゼが阻害され、メラニンの生成が抑制されました。あけびはビタミンCを豊富に含まれることから、美白作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19186973

【5】英国人220名を対象に、食物繊維摂取量と便通回数と大腸疾患の関係が見られました。あけびは食物繊維を豊富に含むことから、腸内環境を整えることに役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1333426

【6】ネフローゼ症候群患者における尿中のカリウム濃度と浮腫(むくみ)の発症に関係性があると考えられます。腎臓では体液の濃度が調節されており、カリウムは水分調節機能を持っています。あけびはカリウムを豊富に含むことから、むくみ予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21422677

【7】思春期の女性150,700名を対象に、鉄と葉酸を毎週1回、4年間継続摂取させたところ、ヘモグロビン値と貧血に改善が見られました。あけびは葉酸を豊富に含むことから、貧血予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18947031

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参考文献

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・蔵敏則 著 食材図典 小学館

・Koo HJ, Sung YY, Kim HK. (2013) “Inhibitory effects of Akebia quinata ethanol extract on TNF-α-mediated vascular inflammation in human aortic smooth muscle cells.” Mol Med Rep. 2013 Feb;7(2):379-83.

・Kawata J, Kameda M, Miyazawa M. (2007) “Constituents of essential oil from the dried fruits and stems of Akebia quinata (THUNB.) DECNE.” J Oleo Sci. 2007;56(2):59-63.

・Mimaki Y, Kuroda M, Yokosuka A, Harada H, Fukushima M, Sashida Y. (2003) “Triterpenes and triterpene saponins from the stems of Akebia trifoliata.” Chem Pharm Bull (Tokyo). 2003 Aug;51(8):960-5.

・Shimada Y, Tai H, Tanaka A, Ikezawa-Suzuki I, Takagi K, Yoshida Y, Yoshie H. (2009) “Effects of ascorbic acid on gingival melanin pigmentation in vitro and in vivo.” J Periodontol. 2009 Feb;80(2):317-23.

・Cummings JH, Bingham SA, Heaton KW, Eastwood MA. (1992) “Fecal weight, colon cancer risk, and dietary intake of nonstarch polysaccharides (dietary fiber)” Gastroenterology. 1992 Dec;103(6):1783-9.

・Matsumoto H, Miyaoka Y, Okada T, Nagaoka Y, Wada T, Gondo A, Esaki S, Hayashi A, Nakao T. (2011) “Ratio of urinary potassium to urinary sodium and the potassium and edema status in nephrotic syndrome.” Intern Med. 2011;50(6):551-5.

・Vir SC, Singh N, Nigam AK, Jain R. (2008) “Weekly iron and folic acid supplementation with counseling reduces anemia in adolescent girls: a large-scale effectiveness study in Uttar Pradesh, India.” Food Nutr Bull. 2008 Sep;29(3):186-94.

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